野生生物にとっての酪農ができない環境

みんなの牛乳勉強会報告(2011年6月号)の記事から、関東では福島県以外でも、酪農を巡る環境が一変したことを再認識しました。
みんなの牛乳の生産者である東毛酪農は、利根川河川敷の草など農薬のない野草や無農薬大豆のしぼりかすなどを使って牛を育ててきました(2010年2月20日記事参照)。しかし今は、自家生産した牧草を牛に与えないように、牛を牛舎から出さないようにしています。牧草の放射線濃度がたとえ暫定許容値以下であっても、汚染されていることは事実なわけで、それを牛に与えることにより牛乳にどんな影響が出るか未知数であることが、東毛酪農を悩ませています。自衛手段として輸入牧草を増やすことも検討しているそうです。
農薬や化学肥料を使わない大豆や小麦を育ててきた東毛酪農関係の有機農法農家にとって、原発の影響は深刻なのだそうです。カリウムセシウムと同じ族なので、植物はカリウムと間違えてセシウムを取り込む性質があるそうです。報告では京都大学小出裕章先生のチェルノブイリ事故後に測定した結果が紹介されていました。同じ地域で比較したセシウム137の値が、有機農法玄米だと1.4Bq/kg、化学肥料で育てた玄米だと0.37Bq/kgと、カリ肥料がふんだんに与えられた玄米の方が放射性セシウムの取り込みが少ないという結果になりました。
どうすればいいのか、何をすべきなのか。ここからは私の思いつきです。汚染された表層土壌をとりあえず掘り返して根が届かない部分に移す。一方で、セシウムストロンチウムが地下水をどの程度汚染するのかモニタリングが必要で、上昇の兆しがでてきたら、除線も視野にいれる。
他方、耕作対照地ではない非都市化地域、例えば森林とか草地の土壌生物(ミミズとか)や、そのような土地を集水域に持つ閉鎖性水域(ため池や沼など)の水生生物の汚染度も、現時点と1年後くらいに調べる必要があると思います。土壌生物や水生生物の汚染は生物濃縮によって、鳥やモグラなどのほ乳類などに、より高濃度に蓄積すると考えられるからです。彼らも癌が増えたり、免疫力が低下するかもしれません。既に汚染されている可能性がありますが、現時点での濃度をとりあえずバックグラウンドとして測っておかないと、将来比較しようが無くなると思います。