生態系を研究する学問

7月19日付記事で紹介した「生態系の環境」。購入した学生さんから「個体、個体群、群集、生態系を示した図が、イメージとしてとてもわかり安かった」との感想をいただきました。この本は左ページが文章、右ページが図表になっています。図のほとんどが浅枝先生のオリジナルでとてもわかりやすく、かつ独特の味わいがあります(どれもエクセルで描いているのが驚きです)。
下記の文章は、学生さんがコメントした図の説明です。
「生物の単位が個体、ある場所に集まった、遺伝的にも相互作用の面でも交流のある同種の個体の集団が個体群、ある場所にみられる異なる個体群の集合が群集である。また、一定地域内に生活する生物群集とそれを取り巻く環境とをまとめたものが生態系である。」
本のタイトルにある「生態系の環境」が指す「環境」は、こういう意味で使われています。
生態系を「生物群集と環境をまとめたもの」とすれば、生態系を研究する学問として最も歴史が長いのは地理学かもしれません。例えば中学か高校の地理で習った気候帯の概念。ステップ気候、ツンドラ気候など、環境と生物を総体的に検討した上での区分であることが分かります。
水環境を考える上で、個体群や群集レベルの研究はもちろん重要です。しかし生態系としての研究(特に上記の意味での「環境」について)が不十分なまま個々の生物の保全に先走るのは、いかがなものかと思います。
NPO法人アサザ基金のように、事業者から弊害が報告された粗朶消波堤を今でもホームページで宣伝しているのは、科学研究とは別次元の問題です)