75000アールもあった霞ヶ浦の沈水植物

水草は下図(「里湖モク採り物語」、図2)のように大きく3つの型に分類されます。

霞ヶ浦では1972年から1978年の間に、沈水植物が半減しました(下図(注)。「里湖モク採り物語、図22を改変)。このとき、アサザなどの浮葉植物は、逆に倍増しています。後述するように、一部の沈水植物は、浮葉植物と置き換わった可能性を示しています。

生態系の基盤は光合成を行う植物です。その植物について霞ヶ浦で再生すべきは、75000アールもあったのに今ではゼロになっている沈水植物です。
アサザの植栽は、霞ヶ浦の生態系全体を考えたときには、自然再生にはなりません。なぜなら浅い湖沼では、下表のように浮葉植物と沈水植物の分布が重なってしまうからです。霞ヶ浦の透明度を考えると、浮葉植物と沈水植物の分布深度はほぼ重なります。

一番上の図をご覧になると分かるように、浮葉植物におおわれると、その葉によって光が湖底に届かなくなるので、沈水植物は生えれなくなります。従って、もともと浮葉植物が繁茂していた場所ではないところにアサザなどの浮葉植物を植栽する、もしくは波を穏やかにすることで浮葉植物が入り込んでしまうような構造物を作ることは、沈水植物の再生を妨げる事業になります。


(注)桜井(1983)と西廣・藤原(2000)から作図。