ナマコ

学生だった1980年代後半、指導教員の調査のお手伝いでフィジーに1ヶ月近く滞在しました。首都スバから船で5時間、電気もガスも水道も、道路さえないサンゴ礁に囲まれた島。
通常の分析法ではアンモニアも硝酸も検出できないくらいきれいな水、草原のように広がる海草藻場。人の影響が非常に少ないその島には、熱帯の藻場でゴロゴロしているはずのナマコが全く見あたりませんでした。
ある夕方、予定より早めに分析が終わって島を散歩していたら、給食センターにあるような大鍋で何かを煮ています。何だろうと見に行ったら、鍋いっぱいの黒ナマコ。半年に1度くらい中国人が来て、煮て干したナマコを買い取るそうです。島ではそれが貴重な現金収入になっているとか。帰国して調べたら、熱帯の開発途上国ではどこも、中国に輸出するためにナマコを取り尽くしていることが分かりました(例えば鶴見良行著「ナマコの眼」)。
私にとってナマコは生で酢で食べたことしかなく、家族で1尾あれば十分。世界中のナマコを取り尽くすなんてどういう食べ方をするのだろうと思っていました。
本日、会議後の晩餐会で中国式ナマコ料理を見て、納得しました。一人一皿。私たちだけで20尾のナマコが消費されました(もっとも、ヨーロッパからの参加者の半分は、見た目に違和感があったのか、手をつけてませんでした)。手前の棒状の物体は、北京ダックの足と説明されました。