Ship & Ocean Newsletter 267に、赤潮生物が現場で発生していない福井県小浜湾の藻場海水や、大阪湾岬公園の自然海岸のマクサやアオサ等の海藻に、赤潮藻を殺滅してしまう殺藻細菌が多数生息することが発見されたとの記事がありました。さらに興味深いのは、大阪府箱作海岸のアマモ場では、海藻表面に匹敵するかそれ以上の殺藻細菌がアマモ葉体に付着している事実が新たに見出されたとの情報です。
中海にかつてアマモ場が発達していた頃は、塩分躍層(水深4mくらい)付近に溶存酸素飽和度の極大層があって、アマモの光合成による酸素供給もしくは躍層に集積する植物プランクトンによる酸素供給だと考えています。いずれにせよ、その水深で光合成ができるくらい、透明度が高かったことになります。赤潮があるとそこまで透明度が高くなりません。
アマモに透明度を低くする赤潮藻を殺す細菌が多いとすれば、アマモ場が維持される重要な仕組です。中海では最近、自然再生事業としてコアマモ藻場の造成が行われているようですが、それぞれが過去にどれくらいあったのかをまず確認すべきでしょう。またアマモ場、コアマモ場がどのような機能を果たしていたのか、過去の記録や現在他の水域に残っているアマモ場、コアマモ場での実態などから確認したうえで、本当にそれが中海での自然再生なのかを慎重に検討してから進めるべきだと思います。
追伸:著者に出典をお尋ねしましたら、下記を送っていただきました。
Imai I, Yamamoto T, Ishii KI, Yamamoto K (2009) Promising prevention strategies for harmful red tides by seagrass beds as enormous sources of algicidal bacteria. In: Proceedings of the 5th World Fisheries Congress, 6c_0995_133, The 5th WFC Organizing Comittee (eds), TerraPub, Tokyo.