環境水理部会研究集会で発表しました(要旨はこちら)。
中海の本庄水域はかつて干拓が予定され、堤防に囲まれていました。私たちは、それがかえって中海本体よりよい環境を維持していると主張していました。しかし「堤防を開削すれば堤防設置以前の環境に近づく」とのイメージしやすい主張に押し切られ、堤防の一部が開削されました。今日の発表では、開削によって本庄水域の深いところが長期的に貧酸素化するようになり、浅いところも堤防設置以前の環境に近づいていないことを、実測データを元に示しました。
「堤防を全て撤去したら昔と同じになる」との意見もあるようです。塩分については、そうなる可能性があります。しかし塩分が昔どおりになるということは、堤防設置以前の1929年に測定されたように、中海全体で水深3m付近に塩分躍層ができるということです。現在の湖底の有機物濃度は1929年の頃より確実に増えていますから、酸素消費も増えます。ですから、地形を1920年代と同じにすることで、酸素濃度も同じになるとは言えません。
幸い最近は順応的管理が重視されています。開削という改変によって本庄水域がどうなったかをきちんとモニタリングし、予測と違った結果になったのならその事態を受けてどうするかを、現場データと科学の知見に基づいて検討することが重要だと思います。