自然再生法10年

自然再生法が制定されたのが2002年。自然再生事業に関わる様々な問題点を、そろそろ整理する節目にきているのではないか。
自然環境保全に長らく取り組んで来られた方にアサザ基金問題を相談したところ、そう言われました。
例えば順応的管理。用いた仮説の誤りが判明した場合、中止を含めて速やかに是正することが求められています。しかし現実にそれは可能でしょうか。
中海干拓予定地では堤防によって囲まれたから水質が悪化したのだ、これを開削すれば水質はよくなると主張する研究者がいました。主張を支持するシミュレーションも発表し、反対意見を押し切って開削させてしまいました。塩分の現状も再現できていない欠陥シミュレーションで「科学的に立証した」と主張したこともさることながら、堤防ができる以前から、中海本体の湖底は酸欠状態にありました。干拓予定地は逆に、堤防によって低塩分水だけ入っていたので本体よりも酸欠しにくく、よりよい状況を保っていたのです。「堤防ができる前は水質がよかった」などという嘘にだまされた開削によって、干拓予定地は本体同様に酸欠しやすくなってしまいました。
しかし開削を主張した研究者は、現時点まで全く是正を表明していません。研究者も人間ですから、誰も何も言わなければ、「私が間違っていました」と懺悔する気にはなれないと思います。また、間違っていたことを示す論文なんて、どこが掲載するのでしょう。
相談に乗っていただいた方からは、「住民参加」についても、アサザ基金に見られるように、課題が見えてきたと言われました。地元で地道に再生に取り組んでいる住民の方は、インターネットや記者会見などで情報発信をすることに重きを置いていません。そのため、霞ヶ浦保全活動はアサザ基金が中心になっているかのごとく、地元の小中学校の先生までがだまされてしまいます。
文系だった頃の知人にアサザ基金問題に取り組んでいることを話したら、「こんな小物、相手にすることはない」と諫められました。ごもっともな指摘で、アサザ基金がこのブログの「アサザ基金の欺瞞」で書いたようなことを繰り返して現在に至っている背景こそが、科学リテラシーや自然再生事業の在り方など、大きな課題だと思います。