アサザ基金の「サンデー毎日の報道について」

Googleで「アサザ基金批判」で検索すると、「サンデー毎日の報道について」というアサザ基金の文書が上位にヒットします。この文書はアサザ基金の問題を浮き彫りにしています。
サンデー毎日の報道について」1ページ8行目には「同氏(=私)が行って来たという批判の手法は、論文という形では無く自身のブログで断片的な情報を都合の良いように寄せ集め、都合の悪い情報は削除し、または事実を書き換えながら、自分こそが科学的であると主張するものです。」とあります。また1ページ下から2行目には「アサザ基金が専門家と協働で実施した評価調査に関する論文(ホームページ掲載)」とあります。
普通、理工系の科学者が「論文を書いた」というときには、学位論文を除けば、査読付論文を指します。私は査読付論文で、霞ヶ浦におけるアサザ植栽は酸欠などの環境破壊をもたらすことを発表しています(水環境学会誌,30(4), 181-184)。従って「論文という形では無く」は事実無根の批判です。私がどういう論文を書いているかは、Cinii(国立情報学研究所 学術情報ナビゲータ)を使えば無料で検索できます。アサザ基金は科学論文の文献検索もできない一方、投稿もしていない文書を「論文」と主張しています。すなわち、科学について無知であるアサザ基金による科学批判は、全く根拠が無いと言えます。
彼らがいかに科学音痴かは2ページ1行目「粗朶消波施設は水質が汚濁されていて現状では再生の見込めない沈水植物群落をモデルに、その機能を代替することを目標に設計すること等を提案」と「石積み消波堤については国交省が造成を始めた1990年頃から私共がその影響(生態系の分断、ヘドロの堆積、水質悪化等)を指摘」でも分かります。
消波堤とは、波を弱めるから消波堤と言います。従って粗朶であっても、消波堤というからには、波を弱める効果があることになります。そして波が弱くなると細かい粒子や密度の軽い有機物が流れ出さなくなってたまります。これがヘドロ化です。石積みなら環境が悪化するが粗朶なら悪化しないということは、従って、原理的にあり得ないのです。
2ページ6行目「山室氏は記事にあるように、この粗朶消波施設を批判していますが、石積み消波堤については一切批判していません。」は事実無根の記事をサンデー毎日に書かせたものです。自然再生を目的とするなら、消波施設は粗朶であれ石積みであれ造るべきではありませんので、2012年3月に行われた水環境学会で、国土交通省霞ヶ浦に設置した自然再生目的の消波施設設置事業が「かえって自然環境を破壊した」と報告しました。さらに、その環境悪化が、アサザ基金が植栽を繰り返してもアサザが定着しなかった原因であることを指摘しました。
http://d.hatena.ne.jp/Limnology/20120314
自然再生を目的に設置された消波堤は全て国土交通省によるものです。アサザ基金が設置した物はありません。また設置時に粗朶を使ったものは流出して漁業被害をもたらしたので、現在は礫で補強されています。従って、私が学会で指摘したものはアサザ基金の定義では「石積み消波堤」です。
何度植えてもアサザが枯れてしまうのを見て、子供達は何を思ったでしょう。しかるにアサザ基金は1ページ下から8行目に「アサザプロジェクトに関わってきた多くの方々とくに子ども達のこころを深く傷付けるものであり、危機的な状況にある霞ヶ浦保全と再生への動きを阻害するものとして容認できるものではありません。」とあります。
容認できないことをしているのは、あなたたちです。
私は霞ヶ浦流域の住人で、アサザ基金が自然環境を全く理解していないのに子供達の環境教育に侵入し、「アサザは水質を浄化します」と書いたプリントを子供達に配り、アサザを植えさせるのを見てきました。結果、霞ヶ浦の環境を守ろうとする多くの方々の努力が踏みにじられて来ました。ブログでは科学的に明らかなことしか書かないように努めていますが、アサザ基金がやってきたことに対する住民の怒りを甘くみず、デタラメだらけの冒涜記事をマスコミに流すような見苦しいことをせず、もう少し真摯に反省していただきたいものです。