霞ヶ浦ではアサザ基金が中心になって、アサザ植栽が繰り返されています。そのような場所では、アサザが覆っている間は水底が酸欠状態になっていること、また植栽を繰り返したところはヘドロ化(=細粒化、有機汚濁化)して、もはやアサザさえ育たなくなっていることを、堆積物の粒度や有機物濃度、硫化物濃度を調べて実証しました(この報告書はインターネットで自由に閲覧できることになっています。公開されたらお伝えいたします)。
植栽によりヘドロ化が進んだ場所は、アサザ植栽事業が始まるまでは、二枚貝が生息していたことが記録されています。今回調査したところ、貝殻どころか、その破片さえほとんどでてきませんでした。10年近くに及んだ植栽事業により、二枚貝は植栽地から完全に消滅していたのでした。二枚貝がいなくなると、貝に産卵するタナゴ類も激減すると考えられます。
子供達は環境によいことをしていると信じて植栽していたのだと思います。彼らが大人になったとき、自分たちの植栽によって、かつてはたくさんいた二枚貝やタナゴ類が住めない場所にしてしまったのだと知ったら、どんな気持ちになるでしょう。
消波堤を造ってアサザを植栽することは環境破壊につながることは、「想定外」ではありませんでした。多くの研究者や住民が反対していたのです(例えば2010年8月12日記事)。にもかかわらず、アサザ基金は学校教育まで入り込んで、子供達にアサザ植栽を行わせました。大手企業もこの団体を支援しました。NHKや新聞各紙の対応、ピアレビューのない一般書で科学的に根拠がないことを主張した科学者の問題、環境問題を現地に行くことなくネットで情報を得ることの危険などについて、社会科学からの検討をお願いしたいところです。自然再生法によって住民参加が求められている今、アサザ基金がやったように、周辺に本当に住んでいる住民の反対を抑えて、知名度だけで行政を動かしてしまう例が続かないために。