事実は現場にしかない

有機農業関係のメーリングリストに、下記が投稿されました。投稿者の許可を得てご紹介します。
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11日、原田正純さんが亡くなられました。

 本をご紹介します。「マイネカルテ」(原田正純聞書・石黒雅史・西日本新聞社)です。

 この本は一昨年、「これは私の遺言状です。」と直接頂いた本です。

 その中で「水俣の教訓を残してゆくために、忘れてはならない視点がある。第1は、弱者の立場で考えることだ。政策や研究とは、そもそも弱者の立場を基本にすべきである。第2は、バリアフリーだ。素人を寄せ付けない専門家の壁、研究者同士の確執、行政間の壁などが、患者救済や病像研究をどれだけ阻害してきたか、私は目の当たりにしてきた。そして第3は、現場に学ぶということだ。事実は現場にしかないのである。」

 今、有機農業も同じと考えます。
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事実は現場にしかありません。NPO法人アサザ基金を支持する方々は、霞ヶ浦の環境を保全したいと考えていると思います。その現場を、是非ご覧下さい。根田地区の湖底で有機汚濁が進み、沼や池に繁茂するはずのハスが入り込んでいる現状を見て下さい。そこはかつて砂底で、二枚貝が住んでいたのです。これが本当に自然再生なのか、現場から考えていただけないでしょうか。
そして、こうなることは明らかだったのに、霞ヶ浦保全に取り組んできた市民団体や茨城大学筑波大学、学園都市の研究機関の研究者も大反対したのに、なぜこのようは愚かな事業、税金の無駄遣いが行われてしまったのか、考えていただければと思います。現場も見ず、反対意見の内容を検討することなく、正しい判断はできないと思います。

自然再生の基本である順応的管理、すなわち「事業による影響を科学的にモニタリングし、不都合があれば事業を修正する」が、アサザ基金による植栽事業では、全く無視されています。科学者が事実をもって悪影響を指摘すると、様々に攻撃してきます。こういう団体が霞ヶ浦流域の子供達に環境教育を行っているのです。

一度失ったら、真の意味では二度と回復できない自然を守ること。今後何がおこるか分からない水環境について、子供達には正しい科学知識をもって、合理的に対応する能力を身につけてもらうこと。
水環境の研究者として私は、単に研究して成果を学術誌に報告するだけでは水環境を守れないこと、上記が大切であることを痛感しています。
ですから、私の子供達が育ったこの霞ヶ浦流域で流域住民の方々と協働して、アサザ基金のようなまちがった活動が起こりにくい仕組みを作っていきたいと考えています。

ご協力よろしくお願い申し上げます。

マイネカルテ―原田正純聞書

マイネカルテ―原田正純聞書