不自然な自然再生事業 −宍道湖でのヨシ植栽

宍道湖では自然再生事業としてヨシ植栽が進められています。
私は1980年代から宍道湖湖岸を見てきましたが、その当時はヨシ原はありませんでした。西岸は特に斐伊川からの砂供給が多く、水温も低めと考えられました。それで、ワカサギが越夏するのはこの地域ではないかと研究したこともあります。その西岸がいつのまにかヨシ植栽地になり、植栽後の遷移で下の写真のように木が入り込み始めました。宍道湖の漁業に深刻な被害をもたらすのではないかと、大変心配しています。

宍道湖の水際に、現在「再生」と称して植えられているヨシ帯は、本当にあったのでしょうか。1947年の米軍撮影空中写真で見る限り、宍道湖の水際には植物はなく、少し沖合に沈水植物がありました。こんな感じの浜が広がっていたと考えられました。

明治〜昭和の松江の古写真を販売しているお店から購入した絵はがきにも、そっくりな光景があります。

また米軍写真では佐陀川と新建川に抽水植物が認められました。絵はがきでも同じような光景がありました。

宍道湖にヨシ帯があったとしたら、流入河川の水際か、陸ヨシだったのではないでしょうか。
そもそも宍道湖の水際線は波が高いので、砂浜が広がっています。その砂浜にはヨシが定着できないからと、消波堤を作って竹筒にヨシを植えること自体、自然にさからっています。波が高く砂の供給が多い湖沼の水際近くは抽水植物も浮葉植物もない砂浜があり、波浪の影響が少し弱くなる沖側に沈水植物が生えているのが自然な状態なのです。


島根県では子供達がこの事業に参加していると聞いていますが、自然の営力に逆らうようなことをした結果クズが入り込むような藪になった湖岸を見て、がっかりするのか、これが自然再生した湖岸だと思い込むのか、どちらなんでしょう?

(追伸)
私なら「宍道湖テナガエビ復活プロジェクト」か「ウナギ復活プロジェクト」を企画します。博士号をとったお祝いに漁師さん達がごちそうしてくれたウナギの味は、今でも忘れません。
シジミについては、既に復活プロジェクトが稼働しています。大変残念なことに、20年もシジミ漁獲量日本一を誇ってきたのに、二位に転落してしまいました。ヨシ植栽地はどんどん増えていますけど、シジミは減る一方です。