生態学者が主導した自然破壊事業

日本生態学会編「自然再生ハンドブック」には、宍道湖でのヨシ植栽事業が紹介されています。しかしこの事業は、自然再生どころか、自然破壊事業でした。宍道湖の湖岸にはいわゆる「水ヨシ」が生えていた事実はないのに、「護岸工事によってヨシが失われた」と生態学者が妄想し、「再生」と称した事業を国交省に行わせたのです。
下の写真は2012年10月の、植栽直後の状況です。

それから6年後の昨日の状況です。ヨシはほとんど無く、セイタカアワダチソウや木本が侵入しています。

この場所は今後どうなるかの参考になるのが、2002年にヨシを植栽した場所です。事業以前の状態がどうだったか、看板の図から分かります。

植栽から10年後の2012年時点でこうなっていました。霞ヶ浦アサザ植栽事業で採用された粗朶消波堤とそっくりの消波堤が見えます。再生したハズのヨシ原ではなく、外来種と木本の藪になっています。このような結果になっていたのに、同じ2012年に冒頭の写真の場所で植栽事業を行ったのです。

さらに6年経った昨日の状況です。湖岸に近づくのさえ容易でないほど藪が育ち木も増えています。

この事業のどこが自然再生事業なのでしょうか。砂浜湖岸を藪にするのに税金を投入することに、どのような正当性があったのでしょうか。2002年時点ではこうなることが分からなかったとしても、2012年になぜ、同じ愚を繰り返したのでしょうか。国交省にこのような事業を提唱した生態学者は、湖岸をこのような状態にしたことに対して、どう責任を取るつもりなのでしょう?
その生態学者も、この事業を書籍で自然再生と紹介した日本生態学会も、事業によってその場がどうなったかモニタリングすることもなく、どうして間違えたのか検証もしていないから、このようなことになったのです。
日本生態学会は、自分達によって生態系を湖岸の環境を破壊したことについては知らぬ顔をし続ける一方で、環境改変を伴う公共事業には抗議しています。まず、自ら襟を正すべきではないでしょうか。

自然再生ハンドブック

自然再生ハンドブック

(追伸)
宍道湖にヨシを植えさせて湖岸を荒れ地化させた生態学者が、今度は「水草についた付着藻がシジミの餌になるから、水草シジミにとって悪いばかりではない」と、臆面もなく珍説を発表していました。宍道湖で底をつきかけていたシジミ資源が急回復したのは浮遊性の珪藻が優占したからで、水草におおわれると流動面でもpHの変化からも、浮遊性珪藻に不利になります(逆にアオコに有利なります)。このことは、この研究者が発表時に示した2010年の写真(水草が繁茂しアオコが覆っている)で歴然としているのに、です。
どうして生態学者は科学に携わっていながら、事実や科学の基礎に基づかない妄想で夢物語を吹聴できるのでしょうか。