生態学会が推奨する湖岸環境悪化事業

霞ヶ浦の湖岸環境を悪化させたアサザ植栽事業は、関連した民間団体もさることながら、「アサザは水質を浄化する」「霞ヶ浦しかアサザは種子生産できない」など、事実に反する主張を生態学者が喧伝し、地元の研究者の反対を押し切った為に進んだものです。
宍道湖のヨシ植栽も同様に、生態学会編の下記書籍により推奨されている事業です。宍道湖のように波が高い湖沼では、海の砂浜のような地形が自然に広がります。下の写真ではそのような砂浜とともに、奥の方の消波施設の背後だけに、ヨシが水際に植わっていることがわかります。

このような景観は、下記のように、水際で波を止め、本来砂が移動するために定着するはずがないヨシを竹筒に差して植えるという、不自然きわまりない「自然再生事業」によってもたらされたものです。なぜ波打ち際に消波してヨシを植えることが自然再生になるのか、科学的根拠は全くありません。

宍道湖同様に波が高い琵琶湖では、「ヨシは主に波浪の弱い水域に限定的に分布しています。このような生物種の分布特性は、波浪の強い大湖沼としての琵琶湖の湖岸環境条件に起因しています。」と明記されています(10月7日付記事参照)。
ヨシ植栽により魚介類が増えると記載された下記生態学会編の本では、根拠として引用されているのは論文ではなく、事業者である国土交通省のパンフレットです。

霞ヶ浦宍道湖生態学会が書籍で推奨している事業を見る限り、生態学会とは「生態系」ではなく陸から見える植物しか見ておらず、そのために湖岸環境が悪化している状況さえ理解できない学会と思わざるを得ません。霞ヶ浦でアセスメントもしないで国土交通省に事業を推進させたのも、生態学者による「順応的管理」という言い訳でした。上記のように事業者のパンフレットを引用するやり方も、自然再生とは実は言い訳で、国土交通省と事業展開すること自体が主目的なのかと邪推したくなります。

どちらの事業も、地元の小学校を事業に参加させています。アサザやヨシを植えっぱなしにするだけで自然が再生するとの認識を子供達に刷り込むことにつながります(宍道湖ではそれにより二枚貝シジミが増えると説明されています。事実はヨシ植栽地が増えるとともに、シジミは減っています)。
私が調べた限り、両事業ともに自然再生事業の好例と評価しているのは、生態学会による本書だけです。同学会は実態を確認し、本当に学会としてこの事業が自然再生事業の好例なのか、確認すべきではないでしょうか。

自然再生ハンドブック

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