ヨシの植えっぱなしは水質汚濁を招く

ホーン&ゴールドマン著「陸水学」には、湖沼に流入する栄養塩負荷を減らすことができない場合に、さらなる汚濁を防ぐためにどのような管理ができるか解説しています。その一つが「植物の収穫」(563〜565頁)。ガマなどの抽水植物を刈り取る専用装置が紹介されています。富栄養化した湖底に根がある抽水植物が窒素やリンを吸収し、大気の二酸化炭素を使って光合成を行うのですから、有機物の浄化ではなく負荷になります。だからこそ「陸水学」では刈り取りを紹介しているのです。
富栄養化湖沼の水草は除去しなければ水質の悪化を招くことは教科書に記載されるほど基礎的な知見ですが、日本では水質浄化機能があるとして、水草を専門とする保全生態学者がヨシ植栽(の植えっぱなし)を指導している湖沼があります。この方は、陸水学の基本的な知見を学習する機会がなかったのかもしれません。陸水学会は、水域の自然再生事業について、もう少し積極的に発言してもよいように思います。また、木を見て森を見ず的な再生事業が環境教育として義務教育に導入されている事態についても、何らかの対応をすべきではと思います。

陸水学

陸水学