化学物質過敏症問題 〜ピコ通信最終号から

このブログでたびたびご紹介してきた化学物質問題市民研究会「ピコ通信」が、184号をもって終了になります。最終号から、同会が取り組んで来た問題の経緯・現状をご紹介します。今回は「化学物質過敏症問題」です。
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化学物質による健康被害については、公害被害者のことしか問題になって来ていませんでした。“ごく微量の化学物質による健康被害”という化学物質過敏症は、まったく新しい概念の健康被害でした。アレルギーについては当会でも視野に入れていましたが、化学物質過敏症はアレルギーとも異なる機序の新しい疾病であることが分かりました。
それ以来、省庁への要望や交渉、相談、シックスクールのメーリングリストなどを通じての情報交換、ピコ通信やウェブサイトでの情報の提供など、微力ながら取り組んで来ました。
2009 年10 月、化学物質過敏症電子カルテシステムや電子化診療報酬請求書(レセプト)で使われる病名リストに新たに登録されました。この事を記念して、同月にシンポジウムを実行委員会形式で開催しました。病名登録はその後、具体的なメリットと呼べるものはほとんどありませんが、それまで「気のせいだ」と言われ続け、家族にも認めてもらえずに苦しんで来た患者さんたちにとっては、正式に認められた意義は大きなものでした。
それに先立つ2009 年1 月に、厚労省から各自治体宛てに送られた「シックハウス症候群に対する相談と対策マニュアル」の中身が大変ひどいものと分かり、抗議の行動と国会での質問、厚労省交渉を他団体と展開し、次のように一定の成果を上げることができました。
このマニュアルは、2005 年度厚生労働科学研究費(主任研究者:岸玲子北海道大学教授)で作成されたものです。化学物質過敏症心因性疾患であると強く示唆されているなど、まったく偏向した内容でした。
我々の行動の結果、厚労省は国会質問に対して「厚生労働科学研究における成果物であり、厚労省の見解ではない」と答弁。同年3 月に「研究班が過去の文献を整理したもので、そのような症状を訴えられる方への対応について示したものではないため、個別の事例に応じて慎重に対応すること。また、化学物質過敏症心因性の疾患であることを示したものではないこと」という事務連絡が各自治体に出されました。
この件については一件落着ですが、未だに化学物質過敏症は気のせいだとする医者や公衆衛生学者、行政関係者が多い状況は変わっていません。
患者さんたちにとっての朗報の一つは、障害年金が受給できるということが広く知られるようになったことです。もちろん十分な額ではありませんが、助けにはなるでしょう。(ピコ通信124 号08 年12 月発行、125 号)
この数年、問題としてきた中に、香料の問題があります。米国P&G の柔軟剤“ダウニー”が日本に入ってきて以来、その強烈な“におい”に体調を崩す人たちが続出。しかも、ダウニー人気に目をつけた日本の洗剤メーカーも続々と強い香料を使うようになって来ました。各地の消費者窓口には苦情や相談が急増し、国民生活センターは今年9 月、業界に対して「においが与える周囲への影響について配慮を促す取り組みを行うよう」要望しました。これまでは香料は心地良いものというメリットしか言われてきませんでしたが、健康への悪影響というデメリットを社会が認識し、対策を立てるべき時です。