次の訪問、MOSEプロジェクト

高潮の時だけ海上に出現する防潮堤を作ったMOSEプロジェクト。その現場を見に行きたいと願っていたら、バイカル湖に行く直前にこちらもバタバタと進展して、ローマ〜ベニスのフライトの確保と現地担当者との連絡も無事に完了。あとは現地担当者から最寄りのホテルを教えてもらって予約するだけです。
「○○という観点からバイカル湖(MOSEプロジェクト)の○○はとても興味深く、その解決(紹介)は人類全体の益につながると思うので、是非調査(見学)に参加させてほしい」とお願いして、どちらも快く受け入れてくれたのは、先方も科学・技術は人類全体の益を目指すべきと考えているからなのでしょう。
科学者もいろいろで、マスコミを賑わすような不正から私の身近で起こっていることまで、組織の温存を最優先に不正を隠蔽するような見識の狭い集団もありますが、幸いにして私の周りにはいつも、人間として本当に尊敬できる人達がこの地球のどこかにいて、様々に助けてもらってきました。
バイカル湖のT先生にとってそれは日本人のW先生だったようで、W先生がいなければ今の自分はなかった、自分にとって本当に先生と言えるのはW先生だけだと何度も話していました。「私が安定同位体の分析法を教えてくださいとお願いに行ったのはW先生だったんですよ」と言うと、奇遇だと喜んでいました。W先生とは自然科学だけでなく、社会問題や人類の将来など様々なことを話していたらしいことが伝わってきました。
所属している専攻は、今年度私が指導するはずだった5人の学生の指導を全て他の教員に変更し、冬学期に開講する科目については、私がシラバスを作成できないようにしています。発端は私が、教員ではなく学生の心身の安全を最優先に対処するようお願いしたことなのですが、それが彼らの価値観とは全く異なるようです。
科学者として伝えてほしいことを託す相手は、必ずしも指導学生とは限りません。公正なマインドを持った国内外の方々と広く交流することから、そういった相手に出会えるように思います。T先生もそう考えているようで、知り合いの研究者を積極的にロシアに招いて、学生との交流を図ってるとのことです。講義や学生指導をさせてくれないおかげで専攻教員以外の方々と共有する時間が増えることは、私にとっては望むところと言えるかもしれません。