お手本にしたい佐鳴湖

昨日は佐鳴湖で素潜りしてきました。ここではかつて取れていたヤマトシジミを復活させようと、住民の方々が「シジミハウス」をつくって、佐鳴湖の水を掛け流しにしている水槽でシジミを育てています。そうすると育つのに、佐鳴湖にまくと全滅してしまうのは、堆積物がよくないからではないか。
そう考えて昨日は、まず、かつてシジミが取れていたという北端を案内してもらいました。昔からあったヨシ原と言われる前に砂場がわずかに広がっているのですが、大部分はヨシゴミで真っ黒です。それにこの地形でこんな形でヨシ原が広がっていたというのは非常に不自然な気がしました。後で、昭和30年代にこのあたりに暮らしていた方に聞いたら、案の定、ヨシ原はありませんでした。かつては田んぼがまわりにあって、佐鳴湖の水位があがるとウナギや鮒や鯉などが田んぼに逃げていって、そこで魚をとっていたとのことです。洪水が起こると田んぼに魚が逃げてくるというのは、私が子供の頃の記憶と合致します。あんなヨシ原があったら魚が逃げれません。手賀沼でも「かつてはヨシ原があって、そこで魚が暮らしていた」と湖岸にぐるりとヨシ原を植えたりしていますが、眉唾ものではないかと私は思っています。
北端の堆積物はシジミには適さないということで、河口側2カ所に行ってみました。下図の矢印の地点です。

どちらもわずかに砂場がありました。また塩分も8PSUくらいありそうな味でした。この砂場が安定して存在するのならば、ここでシジミを放流してみる。それでうまく定着するようなら、シジミを増やすには堆積物の改良が必要ということになりますから、堆積物を何とかするように呼びかけることが可能になると思います。
ところで下の写真は図の上の矢印近くの護岸です。ヨシなどうえていないので、住民が水際まで行って釣りを楽しめます。夏休みの土曜とあって、家族連れも見かけました。

佐鳴湖では船を出してもらってウナギ釣りを楽しむ住民もいて、この日も見える範囲だけでも4艘くらいでていました。なぜウナギがそれほどいるかの鍵は、写真のような護岸の構造にあると思います。テトラポット状の穴のある構造なので、テナガエビもたくさん住んでいるそうです。佐鳴湖は県が管理しているので、住民の方々が護岸は動物が住めるような構造にするよう県に要望し、それに対応したものにしてくれているそうです。
宍道湖でも昔はいたるところがコンクリート垂直護岸で、その前にテトラポットがありました。夏にはテトラポットの上でテナガエビを取り、秋には子ども達がコンクリートの上に並んで座ってハゼ釣りをするのが風物詩でした。親水護岸とか浅場造成とかの工事は、見た目だけの自然再生で、動物の目から見ると自然破壊にしかならなかったと私は考えています。ヨシを植えたり、植えないにしてもなだらかにして潜堤をいれた場所は波あたりが減って堤防近くに草や木が生え藪になります。そうなると子どもだけでなく、大人でも気軽に水際に行くことができません。対して今でも住民がウナギやテナガエビを気軽に釣れる佐鳴湖の現状は、宍道湖の湖岸はどうあるべきかの参考になりそうです。