霞ヶ浦でアサザ保護・植栽に数十億円が費やされたのは、上記を主張する研究者がいたからです(昨年時点でもまだ主張していました。論文は2014年9月23日付記事にリンクを貼っています)。彼らは「アサザの保全は緊急性を要する」と主張、本来行うべきであった環境アセスメントも行われませんでした。
しかし、霞ヶ浦がつい最近までアサザが繁茂できないくらいの塩分だったこと(汽水性のシジミが漁獲されていた)を考えると、上記は何かの間違いであることは明らかでした。また、たとえそのような結果になったとしても、多様な遺伝的背景をもったアサザは淡水化してから集水域から流入したと考えるのが自然で、霞ヶ浦で消波堤を造って保護する根拠は希薄でした。
そこで植物分類学がご専門の先生が中心となって再調査を行った結果、表記はやっぱり誤りで、アサザが種子生産を行える場所は他(例えば西日本)にもあることがわかりました。また遺伝的多様性についても、根本的に見直す必要があることが示唆されました。
この論文は、霞ヶ浦での植栽の根拠として主張された論文と同じ学術誌に発表されました。
藤井伸二・上杉龍士・山室真澄(2015)アサザの生育環境・花型・逸出状況と遺伝的多様性に関する追試.保全生態学研究 20 : 71-85
(追伸)
今年になってアサザに関する論文は2本印刷になりました。査読中が1本。まだまだ書き続けます。アサザに関する荒唐無稽な法螺話が義務教育の理科の教科書にまで記載されるような、国際的に大変恥ずかしい状態が解消されるまで。