会長なんてなるものではなく、会期中は大会・学会運営の諸事に忙殺され、一般講演はほとんど聴きに行けませんでした。
なので要旨を読んだだけなのですが、「2A07京都大学総合博物館(京都市左京区)に収蔵されている膨大な未整理の陸水生物標本(大正〜戦前)について」は貴重な報告だと思いました。
標本瓶・管瓶に封入された小・中型動植物の標本が少なくとも9000点。採取地は旧満州、内蒙古、関東州、朝鮮、台湾、樺太、千島などの湖沼だそうです。また1935年に沖縄本島、井平屋島、久米島で行われた調査で採取し、上野益三氏に同定を依頼したサンプル約30点もあるそうです。
私は、生態系の保全や多様性の議論において、標本は不可欠だと信じています。標本や、少なくとも記録に基づかない議論は砂上の楼閣でしょう(霞ヶ浦のアサザ保全騒動のように。なぜ「騒動」としたかは、「アサザ基金の欺瞞」カテゴリーの記事で解説しています)。
戦前の状態を記録する貴重な標本も含め、標本を残すのは次世代に日本の自然を伝える義務の一環という位置づけで、一大学だけでなく、国をあげてのプロジェクトとして対応してもらいたいと思います。