アサザ霞ヶ浦で拡大中

10月11日の調査で、少なくとも2年前には認められなかったアサザ群落が広がっているのを発見しました。しかも、霞ヶ浦アサザの遺伝子を網羅的に報告した既報(上杉ら、2009)にはない、等花柱花でした。

アサザは海外では侵略的外来種として様々な弊害をもたらしています。Global Invasive Species Database
にはその弊害として、群落下部は水が停滞し酸素濃度が低下する、魚の生息が阻害されると書かれています。
こういったタイプの種は、いわゆるr戦略を採るものが多いです。即ちニッチェが空いたらさっと侵入し、短期間で増えるのです。上記写真の群落の広がりからも、アサザの旺盛な繁殖力が分かります。
ちなみに霞ヶ浦アサザが広がったのは、護岸工事以降の1980年代です。最も大きい群落がある麻生も、地元住民の聞き取りによれば、70年代までは大型二枚貝が多く生息する、水草などが生えることができない波あたりの高い砂浜でした。実際、アサザが生えている砂地を掘ってみると、カラスガイらしき大きな貝殻がでてきます。
霞ヶ浦では護岸工事と並行して、コンクリートによる船だまりが各地で作られました。現在アサザが咲いているのは、「保全」と称して作られたところも含め、船だまりや消波堤が作られているところです。即ち、霞ヶ浦人工湖岸化が本来の霞ヶ浦には無かった波あたりの弱いニッチェを作り出し、80年代に爆発的に増えたのがアサザだったということだと思います。
今回の調査で、保全事業などしていないのにアサザが勝手に入り込んで広がっている場所を新たにいくつか確認しました。その一例が麻生漁港です。アサザだけでなく、特定外来生物ミズヒマワリも入り込んでいます。今回の調査で、西岸のアサザ繁茂地は例外なくミズヒマワリも入っていました。本来の波が高い霞ヶ浦ではあり得なかったことです。

下の写真は麻生漁港アサザ繁茂地の遠景です。陸上からはセイタカアワダチソウが入り込んでいることが分かります。かつてアサザ保全と称して粗朶消波堤が設置された地区も、今では同様の光景を呈しています。アサザセイタカアワダチソウも美しい黄色ですね。

見た目だけでいい加減な保全事業を進めてきた結果が、今の惨憺たる霞ヶ浦だと思います。この事業を進めて来た有識者達が改心しない限り、霞ヶ浦生態系だけでなく、平野部の湖沼生態系の受難は続くでしょう。