日本の科学者は恵まれている

今回のASLOのセッション008「Changes in large freshwater ecosystems: drivers, responses, and restoration」は、結果的にバイカル湖5件、五大湖7件、その他3件となりました。
そのうち2名はロシア人、1名は日本人の私だったのですが、驚いたことに五大湖の発表をしたアメリカの大学に所属する2名と、その他の発表をした、同じくアメリカの大学に所属する1名が、もともとはロシア人でした。アメリカの大学に所属する13名の研究者のうち、3名までもがロシア人だったことになります。時々、あたかもここがロシアのように、関係者の間でロシア語が飛び交っていました。
聞けば彼らも私と同じ50代で、1990年代、学位取り立ての若手研究者だった頃にロシアが大混乱になり、研究を続けるためには祖国を捨てざるを得なかったとのことでした。事情を聞いた方の大学では、化学に2名、物理に3名、やはり当時のロシアの混乱の為にアメリカに渡って、そのまま教授にまでなった研究者がいるとのことでした。
日本の科学者も敗戦で大変な状況に置かれたと思いますが、そのために国を捨てて外国に渡った研究者が、例えばアメリカの1つの大学の理学系だけで6名なんて数にはなっていなかったと思います。明治維新以後の日本の科学者は、そういう意味では恵まれた状況で今に至っているのかもしれないと思いました。