他人の仕事を読むのは3分の1以下でいい

ここしばらくは書き物をする時間が発表資料や助成申請に費やされてきて、ようやく一昨日から論文執筆に充てられるようになりました。今回は関係者筆頭論文のお手伝いではなく自身の単著なので、マイペースで進められることもあり、1日3頁(=7日でほぼ完成)ペースと、交通事故前にかなり近いペースを保っています。
学生の頃は、当然ながら、こんなペースで書けませんでした。博士3年くらいのときのある日、指導教員の小池勲夫先生とこんな会話がありました。
「あなたは、本当に書くのが遅いね。」
「だって実験が続いて、書く暇ありません。」
「バカだね、あなた。手を動かしていたって、論文なんて頭の中で書けるじゃない。」
そりゃ先生くらい頭がよければできるでしょうけど、私じゃ無理ですよと思ったものの、当時は小池先生から「バカだね、あなた。」を頻発されていて頭に来ていたところだったので、ヨシ、10年以内に先生より速く論文出せるようになって見返してやる!と思ったのでした。10年かからずに、頭の中で書けるようになりました(途中、交通事故で脳の高次機能障害を負った期間は全くできず)。
全ての人ができるとは思いませんが、例えば筑波大学の鍋倉先生が「誰でもフルマラソン走れる」に近いことを主張されている感じで、コツと正しい練習をすれば、かなりの人が頭の中で文章を書いて、両手が空いているときにわきでるように論文を入力することは可能だろうと思います。要は意欲と習慣化ですね。
ここで気をつけたいのは、論文を書くからといって、他人の論文や本を読みすぎないことです。実業では「現場が全て」と言って違和感はないと思いますが、環境に関する研究も、本当にオリジナルな研究をしたいなら現場が全てです。私の場合、「現場」とはフィールドワーク、実験、それらの解析、既存のデータ(論文ではなくモニタリングデータや統計書など)の解析などを指します。他人のできあがった論文や本を読むのは、多くてその3分の1以下にとどめましょう。また、ざっと読んで分からない論文は、自分がバカだからではなく、わかりにくく書いている著者がバカなんだと割り切って、一般的なページ数の英語論文でも、1本読むのに5分以上かけないようにしましょう。ただし日本語でも5分で読めない場合は、速読力が不足していますから、速く読む訓練をしましょう。
高校で留学してた時に潜入していたハーバード大学では、学部1年のときに毎晩6冊くらい本を読まないと書けない宿題が課せられ、なので図書館は24時間オープンでした。その1年間で誰もが速く読めるようになるようです(できない学生は落ちこぼれて退学、日本と違って入学は簡単ですが、卒業にたどりつくのは難しいのです)。世界で通用する研究をするのであれば、速読は絶対身につけておかねばならない能力と心得ましょう。
(追伸)
何でこんな記事書いたか分かりますよね、T君、K君。そして久しぶりに、研究生ですが、学生を引き受けることにしたので、H君にも同じことを繰り返し言うことになりそうです。