私達は知らぬまにどれほど化学物質に汚染されているのか

環境ホルモン学会の講演で、日本人がどれくらい非意図的に化学物質を取り込んでいるかの調査報告として、「日本人における化学物質の曝露量について2017」が紹介されていました。
日本の過去の調査と比べて今回の測定値がどうかというコメントが中心でした。諸外国との比較があると、日本が他の国と比べて比較的安全と言えるのかどうか、一般に分かりやすくなるだろうと思いました。
それでも有機リン系農薬の代謝産物が尿中から検出されていて(14頁)、食物に残留する農薬が体内に入っていることが分かります。
一方でネオニコチノイド系農薬の代謝産物は検出されていませんでした。これについては学会のポスター発表で尿中からネオニコチノイドそのものが検出されているので、人間の体内では代謝されないから代謝産物が出なかっただけ、という可能性があります。
「へぇ、ここまで書いたのね。」と思ったのが、24頁です。血液中ダイオキシン濃度が都市、農村、漁村の被験者別に示されていて、漁村が有意に高い結果でした。その下に血液中DHAEPA濃度とダイオキシン濃度との相関図が示されていて、正の相関が見られることが示されていました。つまり青魚(サバなど)を中心とする魚介類を多く食べるほど、ダイオキシンが蓄積しやすくなるのです。昨日、「健康長寿は○○を食べている」というテレビ番組ではコンタミしている毒物を全く考慮していないことを指摘しましたが、健康長寿がよく食べるサバにもダイオキシンのリスクがあることを示しているわけです。
概して日本人は健長寿にすごく関心をもっている割には、人工化学物質には極めて鈍感です。だから人工香料が巷に溢れ、室内空気を次亜塩素酸で殺菌するという信じがたい製品がでてくるのでしょう。
(追伸)
ここからは英語が苦手でない方に。
学会の講演で、「EDC-2: The Endocrine Society's Second Scientific Statement on Endocrine-Disrupting Chemicals」
https://academic.oup.com/edrv/article-pdf/36/6/E1/10335065/edrv00E1.pdf
が紹介されていました。そのイントロに下記が書かれています。
「In 2014ー2015 when this second Scientific Statement, EDC-2, was written, there was far more conclusive evidence for whether, when, and how EDCs perturb endocrine systems, including in humans. Thus, it is more necessary than ever to minimize further exposures.」
最後の文章は「内分泌撹乱物質へのこれ以上の曝露を最小限にしなければならない」と書かれていますが、Googleで「環境ホルモン」を入力するとWikipediaの「内分泌撹乱物質」がでてきて、その中の「研究の現状」をみると、まるで環境ホルモン問題は間違いだったかのような記載になっています。
まずいことに若い世代はスマホで検索するので、この情報を鵜呑みにしてしまう可能性が高いのですが、PCで同じWikipediaの「内分泌撹乱物質」を検索すると、左側にその説明が英語やスペイン語、ドイツ語など、他の言語ではどう説明されているか調べることができます。そこで英語をクリックすると、上記の英語と同様、内分泌撹乱物質による弊害がより明確になっていることが分かります(スマホだとEndocrine disruptorと入力してWikipediaの英語解説を見てください)。
なぜ英語と日本語で全く異なる見解になっているのか考えれば、なぜ健康番組で「健康長寿には化学物質曝露を減らすことが大切」と決して放映されない理由がわかると思います。