池江璃花子選手の白血病と水道水の塩素消毒は無関係と言えるか?

「水道水 消毒副生物」でネット検索すると、トリハロメタン(発がん性)をはじめ、様々な発がん性物質が水道水の塩素消毒によって生じるとの記事がでてきます(なんと、ホルマリンまで発生します)。浄水場では一定濃度以上の毒性物質は除去しますが、水道法では蛇口において残量塩素が0.1㎎/L以上あることとなっています。そして関東平野の下流部で取水される水は有機物濃度が高いので、水道管を通っている間にこの残留塩素と有機物が反応して、蛇口から出る水には再びトリハロメタンなどの消毒副生物が混入した状態になります。
では水道水を飲まなければガンのリスクが減らせるかといえば、さにあらず。消毒副生物はプールで泳いでいる間に皮膚から吸収されますし、また極めて揮発しやすいので、屋内プール内の空気中には様々な毒性物質で満ちていて、それを呼吸しながら水泳選手は日夜練習に励むわけです。
私は2002年時点でこのような状況になっていることを揮発性有機化合物のプロに分析してもらって確認し、水泳選手、特に都内や大阪などのスイミングスクール出身者はガン発症率がほかのスポーツより高くなるはずだと考えていました。池江璃花子選手が結構有機物濃度が高い原水を使っている地域のスイミングスクール出身と知ったときには、これはやばいかもと思っていたところ、昨日の報道があって非常にショックを受けました。
2007年に大学教員になって以来、末尾に記した文献も示しながら、内外の講義で消毒副生物の発がんリスクの危険を訴え続けました。しかしそれだけでは十分広まりません。
この機会に消毒副生物として蛇口からどのようなものが検出されるのか、それを飲まずとも皮膚や呼吸で摂取することでどのようなリスクがあるのか、厚生労働省には徹底的に調査していただきたいと思います。気相暴露などによる発がん性のリスクは、すでに2007年に学術誌で指摘されているのですから。
Richardson et al. (2007) Occurrence, genotoxicity, and carcinogenicity of regulated and emerging disinfection by-products in drinking water. A review and roadmap for research. Mutation Research, 636, 178-242.
https://www.researchgate.net/publication/5865306_Occurrence_Genotoxicity_and_Carcinogenicity_of_Regulated_and_Emerging_Disinfection_By-Products_in_Drinking_Water_A_Review_and_Roadmap_for_Research