タイムリミット

私が東大に赴任したとき、前任者から修士1年2名、2年4名、博士3年1名と、博士(休学中→そのまま退学)を引き継ぎました。修士2年以上の学生はみな、イオンクロマトを使って分析した水質から議論するという、私がやったことのない研究をしていました。途中から内容を変えるのは士気に響くと思い、その線で指導するために教科書を数冊読むことから始め、当該分野では何が最先端なのか、それを越えるにはどんなストーリーにすればいいのかを国際誌を100本以上読んだ上で考えるのに時間を採られ、いろいろ体調崩しました(脳脊髄液減少症が悪化し、腸閉塞を起こして入院、果ては頸椎椎間板ヘルニアが悪化して手術)。
私の場合は前任者からお話があって赴任したのですが、私の後任者は、「公募」が文字通りに行われるのでしたら、どういう方が来られるのか全くわかりません。なので、退職時には学生を残さないことに決めています。
私は来年で還暦を迎え、東大の定年は65歳です。外国人留学生の場合、研究生1年、修士2年、博士3年が最短なので、学卒の外国人で学位所得を希望している方は、定年を理由にお断りしています。来年からは、修士から進学して学位まで目指す日本人もお断りすることになります。
これまで多くの方から進学希望のご相談があり、「ちょっとあなたはウチでは無理でしょ。」という場合にどうお断りすればよいか悩んだりしてましたが、「定年」の一言で説明できるようになって、すごく気楽なこのごろです。