あとひとつふたつ

宍道湖でワカサギやウナギが減ったのはネオニコチノイドが原因ではないかと思いついてから論文が出るまで、丸4年かかりました。定年まであと6年なので、分析機器必須のテーマで解決できるのは、あとひとつかふたつのようです。

日本で水界生態系の脅威になると思っているのが、マイクロカプセルです。家庭で使用されるものだと、柔軟剤の香料がマイクロカプセルに入っていて、香りを長持ちさせています。香料は水溶性ではないので、先進国の沿岸でとれる魚類から香料成分が検出されるのは、マイクロカプセルを鰓から取り込んでしまったからではないかと考えています。

魚より被害が懸念されるのが懸濁物食二枚貝(アサリやシジミなど)です。大量の水を濾過することで餌を採っているのですから、その影響は魚の比ではありません。その上、最近は農薬をマイクロカプセル化した製品が増えています。水田農薬としてマイクロカプセルを大量に使用するようになったら、農薬汚染が深刻になって、二枚貝漁業は壊滅的になるのではないかと心配しています。

次に取り組む予定なのが、バイカル湖のマイクロプラスチックです。バイカル湖は多くの固有種がいますが、最も種類が多いのがヨコエビ類です。彼らが餌と混入しているマイクロプラスチックを食べて、それを排出できなかったら、深刻な影響を受けることになります。ヨコエビ類が減ることでそれを食べる魚類が減り、魚類を食べる、あのかわいらしいバイカルアザラシが激減するなんて事態にならないうちに、実態を解明しなければなりません。

ネオニコ論文の取材とか、集中講義の準備とか、いろいろいろいろありますが、そろそろ次のテーマにどっぷりつかりたくなってきました。