日本の水道水が危ないわけ

岩波書店が発行している雑誌「科学」10月号に、「木村‐黒田純子:除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性〈上〉安全とはいえない農薬の基準値」が掲載されています。
殺虫剤については過去に魚毒性が問題になったこともあり用心している方も多いと思いますが、除草剤については危険性を認識していない方が多いように思います。
しかし、場合によっては殺虫剤よりも除草剤の方が人の健康に深刻な影響を及ぼします。その一つの原因が、この記事で取り上げられています。
除草剤グリホサートは「ラウンドアップ」などの商品として販売されています。そして、毒性検査がされているのはグリホサート原体だけなのですが、ラウンドアップなどの農薬製剤の方が、原体よりも100倍も毒性が強いと報告されているのです。農薬製剤には原体以外に多種類の添加剤が含まれていて、その内容は企業秘密になっています。毒性検査のやりようがないのです。
このように、除草剤に含まれる原体以外のものが極めて有毒で、水田から流出した除草剤に含まれるその物質が、米どころ新潟県で多くの人を癌にした例があります。除草剤CNPやPCPに、猛毒のダイオキシン類が不純物として含まれていたのです。
http://risk.kan.ynu.ac.jp/masunaga/rmg/DX990708/Poster.PDF

私のScience論文では、水田にまかれたネオニコチノイドが宍道湖に流入し、ウナギやワカサギの餌を減らしてしまったことを報告しました。高価な農薬を多用できる先進国の中で、日本は唯一、主食が米です。小麦畑にまかれた農薬は土壌に浸透しますが、水田にまかれた農薬は、大なり小なり必ず流出して、水道水源である川や湖に到達します。そこに到達する農薬の原体は人の健康を脅かさないまでも、添加剤や不純物については誰も安全性を保証していないのです。ですから、川や湖などから原水を取水している日本の水道水は、水田に農薬がまかれる以上、「絶対に安全」とは原理的に言えないのです。
水田での農薬使用を極力減らす技術を開発するか、川や湖の水を飲用水にするのはやめて、100年以上滞留時間がある地下水だけを飲用するしかないと思います。