ある程度成長した個体が特定方向に向かうのを待ち受けて網を張る刺し網などと比べて、トロール漁はある意味、一網打尽的です。またシラウオのような繊細な魚は、よほど大量にとれないと、引いている間に傷んで商品価値を失うものもでてくると思います。
下記ホームページによれば、霞ヶ浦ではテナガエビ、ワカサギ、シラウオを毎年、そんなトロール漁で漁獲していて資源が尽きないようです。
考えてみれば霞ヶ浦はかなり富栄養化した湖沼で、それは即ち餌になる植物プランクトンが多いことを示しますから(霞ヶ浦は除草剤を減らして水草が復活した宍道湖と違って、水草はほとんど繁茂しておらず、植物の大部分が植物プランクトンです)、大量に取れていて当たり前かもしれません。
一方で、「淡水化したらアオコまみれの霞ヶ浦のようになる」と反対運動が起こり、淡水化を免れた宍道湖では、その後シジミから除草剤が検出されて集水域での除草剤使用が減った結果、水草が大量繁茂するようになりました。一方で使用量がウナギ上りに増えたネオニコチノイド系殺虫剤によってテナガエビを含む甲殻類や昆虫類が激減し、ワカサギやテナガエビの漁獲はほとんどありません。ネオニコチノイド使用以前は、定置網があがらないほどワカサギが入り、当時は値が高かったスズキを残すためにワカサギを捨ててようやく網をあげることもありました。
淡水化によってシジミは守られた宍道湖ですが、水草繁茂によってそのシジミ資源も危うくなるかもしれません。その上、二枚貝がシジミだけなのと同様、動物プランクトンはネオニコに弱い1種類だけの低塩分汽水であり続けることで、餌の激減を招いてワカサギやウナギ、そしてテナガエビまでも減ってしまった宍道湖。霞ヶ浦と比べて、ここまで明暗が分かれるものかと暗澹としています。
ただしテナガエビについては、同じテナガエビが淡水の霞ヶ浦では影響を受けていないことから、もしかしたら淡水側に生息域を作ってやれば資源が復活する可能性もあるのかなと思っています。
いずれにせよ、これまでネオニコの毒性については大部分が淡水生物によって試験されてきました。ましてや淡水種を汽水で試験したとか、汽水種を淡水で試験した例は、思いつく限りのワードで検索しましたが、世界でも全く行われていませんでした。
汽水域は一部の海産魚の稚魚が初期成長する場でもあります。汽水域での餌不足は、やがては海産魚の資源減少にもつながります。関係者には汽水生物に対する農薬を含む化学物質の影響の検討(毒性試験を含む)を行った上で、規制の再検討を行っていただきたいと思います。