私は滅多に映画をみません。またアメリカという国もそれほど好きではありません。そんな中で「アポロ13」は現在に至るまで、科学者としての生き方の支えになっている映画です。
いつでも脳の中で再現できるくらい印象に残っているのが、二酸化炭素の濾過が追いつかなくなった危機をどう回避するか、ヒューストン担当者が宇宙船にあるはずの物を目の前に並べて、みなで試行錯誤しながら解決策を導き出す場面です。机上の空論ではなく具体的なデータ(ここではアポロにあるもの)を吟味し、科学技術の知見を有する複数の人間が顔をつきあわせて議論をすることで、かくも困難な課題を解決したことに感激しました。
コロナに関して言えば、日本政府は初期の間に、危機を回避するためにできたことがあったと思います。
ひとつはPCR検査の充実。韓国などでは早期に実現できたことを、日本はできない理由を挙げるばかりで実現できなかったことは、マスコミなどでも批判していました。
私はもうひとつあったと思います。ワクチンはウイルスという半生物を扱うことですから時間と不確実性が高いですが、既存薬(アヒガンなど)のどれかが使えないか、使えるためのサーベイを行い、臨床試験をどうやって最短期間で済ませ、そのためにはどのような法改正が必要か、関連する専門家が顔をつきあわせて議論して進めることができるプロジェクトチームを作れたのではないかと思うのです。
私は医療や厚生行政の専門家ではなく、マスコミに知人もいないので実際のところはわかりません。しかし普通に入手できる情報を見るかぎり、既存薬の応用可能性は個々の研究機関・医療機関がバラバラに進めているように見えます。アポロ13という国家プロジェクトのように、この課題解決は国家プロジェクトとして国がリーダーシップをとって、顔を突き合わせて進めるべきだと思うのです(単に予算をばらまく、ではダメです)。
もしアメリカの大統領がケネディかオバマなら、アメリカがやっていたかもしれません(トランプ政権下ではやっていないと思われます)。逆に中国は既に、国家プロジェクトとして国中の精鋭を選んで進めているのかもしれません。最初に有効な治療薬を見つけたら、そのアドバンテージは巨大ですから。