所属する専攻のゼミで学生さんが、山口県・秋芳洞の固有種「アカツカヨコエビ」と環境との関係を説明していました。環境として水質をみていたのですが、ヨコエビは流れる環境を好むのか(流水性)、よどんでいるのを好むのか(止水性)も重要なので、このエビはどちらだろうとネットで検索したら、「アカツカヨコエビ」なるヨコエビはヒットしません。代わりにヒットしたのが「アカツカメクラヨコエビ(Pseudocrangonyx akatsukai)」でした。
その学生さんのレジュメに学名が書いてなかったので、このヨコエビを指しているのか質問したら、そうだとのこと。なぜ「アカツカヨコエビ」と書いているのか聞いたら、「メクラは差別用語なので、地元の看板でもアカツカヨコエビと表記されています。」と回答しました。釈然としませんでした。
「めくら(盲)」というのは目が見えない状態を指す言葉で、そのことによって差別があるのならば差別用語かもしれませんが、洞窟に住んでいるこのエビが目が見えない生き物であることを示している「メクラ」が、なぜ差別になるのでしょうか。この種が属する科は「メクラヨコエビ科Pseudocrangonyctidae」ですけど、この科名は差別だと変更しようとの動きがあるとはとても思えません。
「盲」という漢字自体が差別と言う人もいるようですが、視覚障害者自身が通っている学校は「盲学校」のままじゃない?と思って調べたところ、「盲学校」を使っている地域と、「視覚支援学校」を使っているところがありました。
山口県は「総合支援学校」で、あくまで「盲」は使わないようにしている地域のようです。
考え方は様々ですが、私自身は、状態を表す言葉自身を差別用語としてして動物の和名から外すのは、行きすぎだと感じます。目が見えない状態はかわいそうとか、劣っているとか、そんな固定概念がなければ、「アカツカメガミエナイヨコエビ」より「アカツカメクラヨコエビ」の方が、このヨコエビが光のない洞窟で長い間生きてきたことを簡潔に示す、よい名前だと思うのです。「アカツカヨコエビ」だと、この動物が洞窟性の貴重種であることが、全く伝わりません。