糞からわかる?

私の修論では、汽水湖における多毛類や二枚貝の分布と環境との関係を調べました。主要調査地の宍道湖では堆積物と水質を分析しました。堆積物は通常、乾燥してから粒度分布や化学分析を行いますが、粒度分布は乾かすときに変わってしまうような気がして、採ってきた泥をそのまま重ねた篩いに乗せ、静かに水をかけて分布を調べました。
そうしたところ、泥しかないはずの水深の深い地点で、中粒砂にあたる粒子があることに気づきました

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そういった地点が湖のどこに分布しているのか地図上に乗せて検討しました。当時はパソコンで図を描くにも大型計算機が必要だった時代です。ポケットコンピューターに粒度分布を書かせて、それをコピーした地図に張って眺めました。

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その結果、ピークはイトゴカイという多毛類がいるところに出ていることに気づきました。それで中流砂にあたる粒径の粒を、当時の東大では博物館でないと利用できなかった電子顕微鏡室に行って写真を撮ってもらいました。どうやらイトゴカイの糞らしいということになりました。

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あれから40年が過ぎ、宍道湖のイトゴカイは激減していることが分かりました。いつから激減したのか、この糞がいつから減っているのか調べればわかるかもしれません。

日本では、かつてはどこにでもたくさんいた赤とんぼが激減したのですが、減る前にはどれくらいいていつから激減したのか、ほとんど記録されていません。イトゴカイの糞のように、赤とんぼ固有の生痕化石などから復元できればいいのにと思います。