最後のおつとめ

職をほとんど変えない人間と違い、ニホンミツバチの働き蜂は日齢とともに仕事を変えます。初期の頃は子育てや温度管理、巣作りです。寒いこの時期は羽のつけねにある筋肉を振るわせて発熱することで、巣を約32℃に保つのが主な仕事になります。

働き蜂の最後のおつとめは、外周りです。蜜や花粉を採ってくる仕事は、外敵に捕食される危険が非常に高くなります。暖かい時期には羽化後20日くらいでこの仕事に従事します。そのため暖かい時期には、弱った働き蜂を巣箱近くで見ることはありませんでした。
気温が10℃を切ると働き蜂は外に出なくなり、秋までに貯めた蜜を食べて冬を越します。気温が低いためか、暖候期には寿命30日くらいですが、冬は3ヶ月くらいだそうです。
昨日のように日中の気温が10℃を越すと、巣箱にたまったゴミが巣門の外に運び出されます。それとともに数個体のミツバチが巣箱の外に出て、飛び立とうとします。

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しかし飛び立つことはできず、地面を歩いて巣箱から離れる方向に歩き出します。

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この現象を初めて見たときには病気かと思いましたが、そうではなく、日齢が経って本来なら外周りに就く働き蜂が外周りに出ることなく寿命を迎え、それでも何とか外へ行こうと努力している状況のようです。

地面を這い回り、やがて動けなくなったミツバチ達は、翌日には消えています。それでなくても鳥が多いわが家の庭では、弱ったミツバチは鳥にとって絶好の餌です。暖かい時期は見ることのなかった食物連鎖を目の前にして、以前よりもずっと感謝してハチミツを頂くようになりました。