こんな報告書を出す学術会議はイヤだ

日本学術会議が昨日(6月23日)付で「外来害虫・病原体・雑草による作物生産被害の現状と対策」という報告書を公開しました。

What's new|日本学術会議

20ページでネオニコチノイドに言及しています。
「化学農薬の中でもとりわけ良いイメージをもたれていないのが、合成殺虫剤 である。その根本原因は、合成殺虫剤の多くが動物・昆虫における恒常性の維 持に必須の神経系を標的とするためであり、際たる例が合成殺虫剤ネオニコチ ノイドある。ネオニコチノイドは問題のある合成農薬の例として幾度となくマ スコミに取り上げられ、みどり戦略でも本剤を他剤に置き換えることが目標の 一つとなるに至っている。」
そして21ページでは.
「しかし、化学農薬は完全に否定すべきかというと、そうではない。防除効果 の即効性や安定性、生産コスト、保存可能な期間が長いなど、化学農薬の方が 生物農薬に比べて優れている面は多数ある。天敵だけ、物理的手段だけという 非化学的手段だけでは温暖な日本において病害虫を防除するのは困難である。」

はぁ???
マスコミはヒトへの影響も問題にしています(特にTBS「報道特集」で出演した専門家4名のうち生態系について語ったのは私だけで、残り3名の先生方はみなヒトへの影響を指摘されています)。そちらの方が一般の関心も高いと思われます。 

しかもこの報告書は17ページで、
「特定外来生物の指定対象は生態系への被害防止の観点が大きいが、人への健康や農林水産業への被害防止も目的となっており、法律上は農林水産業に対して被害をもたらしうる種についても種を指定し輸入を規制することは可能である。」
と記しています。特定外来生物がヒトへの健康も考慮しているというのはヒアリなどからも理解できますが、当の農薬についても長らくヒトへの影響が懸念されてきたからこそ、殺虫剤が有機塩素系→有機リン系と変わり、今は有機リン系をしのぐに至ったネオニコチノイド系のヒトへの影響が問題になっているのです。なのにヒトへの影響を全く言及せずに化学農薬を弁護する報告書をこの時点で出すって、意味深ですよね。

文科III類の同級生だった加藤陽子氏が日本学術会議の会員に推薦されながら、当時の菅総理に任命拒否された時には大変憤ったのですが、その後、断固たる対応を学術会議がしたように見えないのは、こういった報告書を平気で出す人達もいるからだと思いました(もしかしたら既に大部分がそういう人達?)。