輸出用には農薬を減らして栽培

今日はクリスマス。昨夜のイブや今日、イチゴがのったケーキをいただく家庭も多いでしょう。
そのイチゴには、様々な農薬が使われています。特に、ネオニコチノイド系殺虫剤は浸透性なので、表面を洗っても農薬は落ちません。
11月に放映されたTBS報道特集「ネオニコ系農薬 人への影響は?」はYouTubeで145万回以上視聴され、コメントも2000件を超えています(12月25日13時現在)。

コメントの中に、「輸出用の農作物は農薬をかなり減らしているのに、なぜ日本人には農薬まみれのを食べさせるの?」との内容がいくつかありました。実際、日本向けと輸出向けでどれくらい違うのか、イチゴで調べてみました。
農水省は「輸出相手国の残留農薬基準値に対応した病害虫防除マニュアル」をいくつかの作物について公開しています。

輸出相手国の残留農薬基準値に対応した病害虫防除マニュアル:農林水産省

なぜこんなマニュアルを作ったのか、農水省は「日本の基準が高すぎるから。」とは書かず、「我が国の通常の防除体系で使用される農薬の中には、輸出相手国で当該農薬の対象作物が生産されていないことから、当該農薬の登録が行われていないこと等の理由により、輸出相手国の残留農薬基準値が我が国の基準に比べて極めて低いものが存在し、結果として輸出向けの農産物に使用可能な農薬が限定されています。」としています。笑えますね。
イチゴのマニュアルの中に、次の表がありました。黄色でマークしたのがネオニコチノイドです。どの農薬も台湾の基準の方が日本よりはるかに厳しいことが分かります(「ー」は検出されてはならない、という意味です)。

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出典「輸出相手国の残留農薬基準値に対応した生果実(いちご)の病害虫防除マニュアル」

https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/pdf/ichigo_shousai.pdf

このマニュアルの23・24ページには化学合成農薬ではなく、生物を使った防除法などが紹介されています。化学合成農薬を使わないと作物を育てられないわけではないのです。今は高価だったり手間だったりするのかもしれませんが、たとえばパソコンや携帯電話のように、皆が使うようになることで品質が向上し価格も下がる例はいろいろあります。やろうとしてないだけだと思われます。