浚渫と「かいほり」

「かいほり」(かいぼり)という聞き慣れない言葉。かつてため池などで盛んに行われていた、干し上げのことです。水草や泥がヘドロ化したとき、現代では浚渫といって泥ごと除去します。つまり水をはったまま泥を除去するのが浚渫で、泥はそのままで水を一時的に除去するのが「かいほり」です。
化学肥料が広く普及され始める1950年代までは、ヘドロ化した泥は肥料代わりに、このヘドロが植物帯を破壊しない規模で農業従事者によって小規模に浚渫され利用されていました(例えば下記の拙著をごらんください)。

里湖(さとうみ)モク採り物語―50年前の水面下の世界

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これに対して現在行われている機械を使った大規模な浚渫では、泥を面的に除去することにより、シードバンク(植物の種子)が消滅します。また、表面に形成される酸化層も除きます。これに対して「かいほり」は、酸素を供給することで、むしろシードバンクを活性化している可能性が指摘されています。
ため池などではなぜ泥を除去するのではなく、「かいほり」を行っていたのか。泥の除去と「かいほり」でどのように水域を維持する効果が違うのか、それは対象水域の大きさ、流入出の量などと関係があるのか、興味の尽きないところです。