汽水湖の環境保全

ヤマトシジミが漁獲対象になっている水域でのアンケートで、問題として多く聞かれるのが「湖底のヘドロ化」です。
ヘドロ化という言葉には「細粒化」と「還元化(酸素が無くなって黒っぽい色になる)」の2通りがあり、「還元化」だとしたら富栄養化などにより底泥の有機物濃度が増加している、もしくは鉛直混合が不活発になっているのが原因と考えられます。対策としては、前者でしたら淡水湖沼と共通する富栄養化対策となりますが、後者でしたら、汽水湖沼における混合状況をシミュレーションするツールの開発が必要になってきそうです。
「細粒化」だとしたら、原因特定も結構大変です。護岸や離岸堤など湖沼での現象だけでなく、洪水頻度や堰堤設置など、流域での変化も考慮する必要があるからです。河道の樹林化や山林の緑被率の変化も検討すべきかもしれません。
いずれにしても、本当に「ヘドロ化」しているのかを科学的に確認する必要があります。例えば中海では、干拓工事で堤防ができる前は湖底は貧酸素化していなかったとの主張がありましたが、地元の高校の先生やアセスメントの為に行われた調査などで、工事前から貧酸素化していたことが明らかです。
どうやって過去の状態を知るか。過去に表層堆積物の粒度分布や有機物濃度(強熱源量でも可)を測っている水域ならば、現在の表層との比較によって検証できます。そうでないところは柱状試料での検証を試みることになります。
来年度の課題です。