研究紹介2:シャジクモ類はなぜ減ったか?

水草は図のように、浅いところから抽水、浮葉、沈水と異なる生息形態の植物が優占します。シャジクモ類は沈水植物の中でもちょっと変わった植物です。他の水草は維管束植物ですが、この仲間はむしろ藻類に近く、しっかりした根を持っていません。1950年代以前の日本の深い湖では、植物帯の最も深いところはシャジクモが優占していて、シャジクモ帯とよばれていました。
このシャジクモ類が日本の大部分の湖で消滅しています。ヨーロッパでも多くの湖沼で他の沈水植物も含めて衰退していたところが多かったのですが、沈水植物、特にシャジクモ類を復活させることが湖沼水質の回復につながるとされています(水環境学会誌4月号の拙著に解説を書きました)。
日本では、あまりに早くに、沈水植物が衰退してしまったためでしょうか、抽水植物のヨシは盛んに植栽されていますが、水質を回復させるためにシャジクモを増やそうという試みは全く為されていません。むしろ水質を悪化させる浮葉植物のアサザを増やそうという動きまであって、水環境の基本的な知識が一般市民に伝わっていないと感じています。
そもそもどうしてシャジクモ類は減ってしまったのでしょうか。従来は富栄養化、護岸、ソウギョの放流が原因とされていましたが、私は除草剤の影響もあったのではないかと考え、学際的なチームを組んで、この課題に取り組んでいます。明後日はこのプロジェクトの成果発表会です。ここで評価いただければ、今年度も予算的にサポートしていただけます。