昨日9月12日の陸水学会は、午前午後に分かれて、霞ヶ浦に関する2つのシンポジウムがありました。午後は以前にお知らせした、私がコンビーナーを務めた、水質に関するもの。午前は「健全な霞ヶ浦を取り戻せるか?」とのタイトルで行われた、主として生態系に関するものでした。
そのうち、「霞ヶ浦の湖岸植生の再生:技術的な成果と課題」では、シードバンクによって沈水植物が芽生えはしたが、水質が回復したわけではないので、本来の生殖場所であるより深いところに生えることができず、浅いところに生える抽水植物に負けて消えたしまったと報告されていました。
「霞ヶ浦のコイの役割、在来型コイと移入型コイ」では、隔離水塊で移入型コイ用いた野外操作実験は、コイがいるケージでは沈水植物が消滅し、植物プランクトン量が増加するという、水質の観点からはコイがマイナスであるとの結果がでた。しかし体高の低い日本の野生型コイはユーラシアのコイとは遺伝的に全く異なることから、在来型コイと移入型コイでは食性が異なる可能性があると考え安定同位体比を調べたところ、違いが認められた、との報告でした。成体で比較すると窒素同位体比の違いは1‰未満でしたので、標本数を考えると、有意差があるとは私には思えませんでしたが、発想は面白いと思いました。