学融合セミナー

東京大学新領域創成科学研究科では、新しい研究を諸学問の融合から創り出そうとの目的で、全く異なる分野の教員3名が30分づつ研究紹介する「学融合セミナー」を今年度から開催しています。もちろん学生さんも参加できます。事前の予約も不要。

一昨日10月24日にその第4回が開かれ、私も話させていただきました。3名の演題・内容は下記でした。

①山室真澄「水生大型植物の保護・復活による湖沼水質の改善」  
日本では水草の中でも沈水植物が早くに消失してしまったために、その水質保全機能が軽視されてきた。ここでは海外での沈水植物復活の取り組みを紹介するとともに、その水質保全機能のメカニズムについて、最新の研究を紹介する。

②和田猛「リン原子修飾核酸医薬の化学的創製」  
近年,遺伝子の発現を選択的に制御することが可能な比較的短鎖のDNAやRNA誘導体が注目されている。これらを医薬として実用化するためには、核酸誘導体の生体内における安定性を、適切な化学修飾により向上させることが重要である。本講演では、最近開発に成功した新しいリン原子修飾
核酸医薬の合成法について紹介する。また、新領域創成科学研究科内での「学融合」の成果についても報告する。

③柴田直「半導体VLSI技術の新たな展開を求めて:〜心の情報処理に学ぶVLSIブレインプロセッサ〜」  
半導体微細加工技術の進歩は目覚しく、まもなく1cm四方のシリコンチップ上に100億個のトランジスタ集積が可能になる。これは人間の大脳新皮質を構成するニューロンの総数にも匹敵するが、果たして人間のように柔軟な判断のできるコンピュータは出来るのか?現在の技術とは異なるアプローチ
でその可能性を探る。デバイスの物理現象をそのまま基本演算に用いて、心理現象を模擬するVLSIチップについて紹介する。

講演の後は懇親会。軽食(おそらく生協食堂からですけど、とても生協とは思えないハイグレードでした)を囲んで、教員も学生も一緒に、話が弾みました。先生方はみなお話が上手だったので、私のようなアナログ人間でもご面白く拝聴できました。特に柴田先生のお話は、自分が脳に後遺症を持っているだけに、とても興味深かったです。

先生の説ですと、人は認識するときに、予めパターンをたくさん持っていて、そのパターンに近ければより多く電流が流れるという形でモザイクを形成して全体を把握しているのではないか、ということでした。だとすると、例えば赤ちゃんなんかはまだパターンを持っていないから、目は開いていても認識は同意いただけました。どうやらシロウトの疑問も荒唐無稽ではなかったようで、今度は是非、脳では表面に新しい知識が形成されるという、私の後遺症からの推定などもお話してみたいと思いました。

前の職場の産業技術総合研究所でも「ランチョンセミナー」という、学融合型のセミナーがあったのですが、いかんせん昼休みだけなので、講演のあとに講師と聴講者がざっくばらんに意見交換という場がありませんでした。新領域の学融合セミナーは、後に懇親会があることで、本当に学融合を生み出しそうだと思いました。