マングローブがサイクロンから街を守ってくれた

サイクロン「シドル」で大きな被害を受けたバングラデシュ修士を終了して9月に帰国したB君はバングラデシュ第3の都市Khulnaに住んでいます。洪水に襲われやすいデルタ地域なので心配していたのですが、「死亡者は5000人を越えているが、この地域では13名にとどまった。マングローブ林が盾になって守ってくれた(原文:The mangrove forest protected us as a shield.)。」とのメールが届き、ひとまず安心しました。調べてみると、Khulnaの南部にあるSundarbans デルタ地帯は、世界最大のマングローブ林なのだそうです。
マングローブについては、「複合生態系」という言葉を造語して、数年間研究していました。熱帯から亜熱帯にかけていろんな沿岸を見てきたのですが、健全なサンゴ礁が発達しているところは、海草藻場やマングローブ林も健全なように感じました。それで、マングローブ林や海草藻場が陸からの栄養塩や懸濁物をトラップすることで、サンゴ礁が貧栄養に保たれ、藻類の付着などの弊害を受けずに発達できる。逆にサンゴ礁が発達することで堤防としての役割を果たし、陸側の藻場やマングローブ林を保護すると、お互いがお互いにとって利益をもたらすことで結びついているという仮説を立てました。この仮説のうち、有機物のトラップについてはバイオマーカーを使って検証でき、共同研究者が論文を執筆中です。
ということでマングローブについては知見が全く無かったわけではないのですが、バングラデシュのような低地の国にとっては人間にとっても非常に大切なのだと、B君のメールで初めて悟りました。