水工学講演会

広島大学で開催された第52回水工学講演会に参加しました。土木学会会員から水関係の研究が査読論文として投稿され、受理された論文の著者が口頭発表するという、私にとっては珍しい形式の学会発表です。この論文集が事前にCDの形で配布されていて、事前にA4版6ページの論文が読めるものですから、内容の理解にとても役立ちました。
講演は発表が9分、質疑応答が6分。私が参加したセッションの講演者はほぼ時間内に話し終えて、質疑応答がとても充実していました。
水質関係の講演では、測定項目がBOD、COD、TP、TN、SS、DOなどの公共水質モニタリング項目で、理学系の学会のように分析できるだけですごいというものは皆無でしたが、多くの河川で同時に採水するとか、いくつかの河川で連続モニタリングするなど、チームワークを活かして説得力のあるデータを提示されていました。また、水の流動に係わる因子を必ず測っているところが、さすが工学系と思いました。
私は「都市化地域における土地利用と河川水質の関係 −下総台地の坂川流域における事例−」を、筆頭著者のT君に代わって発表しました。論文を投稿する際、筆頭は土木学会会員でなくても大丈夫なのですが、口頭発表は会員のみとされていたからです(でも男性のハズの発表者が女子学生さんだった例もあったので、抜け道はあるみたい)。
都市化がモザイク状に進んでいる地域で土地利用と水質(主要イオン)の関係をGISと多変量解析で検討したという内容で、上記のように他の水質発表がすべてBOD、CODだったことから、こういうことを調べることにどんな意義があるかの説明に時間を使いすぎ、同じセッションの中ではダントツに制限時間をオーバーしてしまいました。
お陰様で「何のために研究したのですか」みたいな厳しい質問はありませんでしたが(このような質問をされた学生さんがいました。ナアナアでない良い学会ですが、学生さんには厳しいかも)、T君の宿題になる質問がありました。
ひとつは「この結果で農地が増えると硫化物が増えると分かって、ではどういう仕組みで出てくるのか、肥料なのか、休耕地とそうでないところでは同じなのかといった方向に進むのですか」というもの。もうひとつは、下水の影響がないのに、都市化が進むと全イオン量が増えるという、そのメカニズムが分からない、というもの。これらの質問の背景には、河川に入っていくイオンが、ある土地利用形態の場所からダイレクトに流れ込むイメージがあるのではないかと思います。現実には、畑地や公園、個人の庭などから浸透した水が地下を通ってしみ出したり、乾性の粒子としてたまっていたものが雨と共に川に流れ込んだり、そのような過程でもともと畑地起源だったイオンが他の起源のものと混じり合ったり除去されたり等、流域土地利用がモザイク状になっている所での面源負荷とは、さまざまな反応の総和だと思われます。だから主成分分析などを使って大まかな傾向を抽出しているわけで、その結果得られた傾向を個別の土地利用の所で調べてかけ算・足し算しても、流域全体での面源負荷とは一致しないと思われます。
面源と言われる負荷がどのように河川に入っていくのか、おおまかな図を示して説明すべきだったと反省しました。
またT君がD論をまとめるに当たっては、畑からの流出負荷、道路からの流出負荷など、単一の土地利用域からの流出負荷特性の既報を整理しておくと説明しやすいだろうと思いました。