干潟を埋めたらどうなるか?

干潟を埋めたてたら環境にどのような影響が生じるか?その評価ツールとしてよく用いられる生態系モデルによるシミュレーションは、通常、水質などのデータが存在する年について、流量など物理データなどを入力して計算し、栄養物質や植物プランクトン、溶存酸素濃度などの計算値と観測値がどれくらい合っているか比べます。まあ合っていると確認したら、次は計画されている環境改変を行ったらどうなるかを、1年分くらい計算します。ここが問題。ある干潟を埋めた影響は、最初はそのごく近くで、翌年にはやや近くでと徐々に広がり、10数年したら沖側に貧酸素水塊がいつも発生するようになるという風に、たった1年で出てくるものではないと思われます。
また、埋め立て中に泥が舞い上がると、沖側に生息する貝などが死滅する可能性が極めて高いのですが、そういった影響の評価は、ほとんどされません。
干潟にはアサリなどの二枚貝が豊富に生息します。その干潟だけでなく、周辺海域の主な漁場に、干潟から泳ぎだした幼生が供給されている可能性があります。それで幼生を粒子としてシミュレーションすると、埋め立てた方がより多くの幼生が残存するという結果になることがあります。これは地形改変によって流れがよどみやすくなる場合に起こります。実際は、そのような状況だと浮泥も沈降しやすいので、数年のうちにそこはヘドロ場になり、幼生が残ったとしても生き残れない場になります。
極端な例として、その干潟を完全に囲う改変でシミュレーションすると、幼生に見立てた粒子は、定着できないような深い場所に無効分散することなく、残存率は干潟の状態の何倍にも増えるでしょう。だからといってそれは、その改変によって二枚貝漁場としてかえってよくなることにはなりません。
このようなことを考えますと、干潟を埋め立てても環境に影響はないと、特に事業者が主張している場合、本当かどうか原点から検討する方が無難でしょう。