水草の手入れで魚の体型管理

3月22日に続き、「琵琶湖の水草問題の現状と課題」の記録集から芳賀先生による「南湖における沈水植物の量的変遷とその要因について」を紹介します。
記録集にはカラーのパワーポイントがあって分かりやすいのですが、琵琶湖で復活した沈水植物は、芳賀先生曰く「ジャングル」のように林立しています。その隙間に泳いでいるのは、ブルーギル。琵琶湖では沈水植物の復活と並行して、ブルーギルが増えているそうです。その理由は、平たい体型。逆に細長いタイプの魚は、丈の高い沈水植物は苦手なのだそうです。
芳賀先生は文献を調べて、今の琵琶湖南湖と1930〜50年代とで、沈水植物の分布がどう違うか復元されました。その結果、今の方が戦前よりも分布面積が多いという結果になりました。
さらに、その内容も全く変わりました。戦前は、ネジレモ、コウガイモ、イバラモが主役で、今はセンニンモ、クロモ、マツモ、ホザキノフサモです。戦前に多かった沈水植物はロゼット状といって、葉がそのまま湖底についている感じです。一方、現在の主役は背が高くて密生するタイプです。
この違いの原因として芳賀先生は、戦前広く行われていた肥料目的の採草漁のおかげで、丈が高くて密生する沈水植物は容易に刈り取られて増えることができず、湖底近くの丈が低い沈水植物が優占できたのではないか、だから平たい体型でない魚も安住できたのではないかと考えています。
ですので、たとえ繁茂面積が同じであっても、現在のように湖面まで沈水植物が生え、そこにはべたべた付着藻類がひっついている状況と、底の方にだけ植物がある状態では、湖岸からの見え方も、漁に与える影響も、全く違っていたと考えられます。
芳賀先生はさらに、1994年の水位低下が沈水植物復活の原因であることは確かだが、それだけが復活の原因ではないと説かれています。なぜなら、同じくらいの水位低下が1980年代にもあったからです。その時は復活せず1994年には復活したのは、光制限以外にも1980年代には、水草を復活させない要因があった可能性があります(総合討論での質問で、その可能性として除草剤を考えていると答えています)。
私が「里湖モク採り物語」を書いていた頃は、沈水植物を適当に間引くことで魚が入れる隙間を作る効果があったのかもしれない程度は考えていました。芳賀先生のお話から、そのままでは竹林になってしまうような山でも筍を切り出してしまうなどして望ましい樹種が残るようにコントロールしていたように、水草の種類までコンとロールしていた可能性があるとうかがって、自然をサステナブルにコントロールする知恵がかつての日本では当たり前に行われていたんだと、改めて思いました。

追伸:この記録集、沈水植物の復活に関心のある方には、役立つ情報満載です。奥付にあった連絡先メールはinfo@lberi.jpです。ここに問い合わせて在庫があれば送ってもらえるかもしれません。