日本の水環境は、大きく二つの問題を抱えていると考えます。量の問題と質の問題です。
量の問題として、温暖化により、日本における降水量は、長期的には減少傾向にあります。一方で、洪水と干ばつという、極端な状況が現れやすくなっています。社会面では都市への人口集中が進み、ダムなどで水資源を確保せざるを得なくなっています。このことが日本の水環境に与える影響は、はかりしれないものがあると考えています。
質の問題としては、ある種の化学物質が極く微量で生物に影響を与えることが分かってきました。また、特に人口が集中している首都圏から大気に出される窒素酸化物が、渓流域の硝酸濃度を数mg/lにまで上昇させています。今後はさらに、中国からの負荷も加わるでしょう。将来、水資源として、特に飲用としては、表流水を使えなくなる可能性も考えなければなりません。
以上のような認識のもとで私は、水環境に関する現状を科学的に把握すること、それを踏まえて長期的・総合的な水環境保全対策を提案することを目的に、幅広く研究を展開しようと努めています。良質な水が得られなければ、人は生きていけません。この研究を、個人ではなく研究室のタスクとして展開することが、昨日書いた「初心にかえる」ことだろうと思います。4カ月後の入試には、このような方針を理解した上で、多くの学生さんがここを目指して来られますように!