中国製食品だけではない、日本における有機リン農薬曝露源

化学物質問題市民研究会発行のピコ通信115号から、有機リン農薬に関する記事をご紹介します。「有機リンへの群馬県の取組みと研究成果」との演題で群馬県衛生環境研究所の小澤邦寿所長が講演された要旨です。
1950 年代以降、有機リン系農薬の毒性に関する医学論文は5,000 件以上も発表されていて、そのうち最新の約100 件の論文を検証したところ、ほとんどの論文が有機リン農薬に慢性毒性があると報告しており、特に近年では遅発性神経毒性と発達神経毒性があるという論文が多いそうです。
このため、EUでは有機リン農薬は使用不可、アメリカでも再評価が行われ、基本的に、有機リン系農薬の空中散布は米国でも認められなくなったそうです。
人間が体内に取り込む化学物質の量の割合は空気からが8 割です。残留農薬の検査も大切ですが、屋外・室内の空気は人間の生活にとってきわめて重要、かつ選択できないものであるからこそ、空中に毒物をまくことには、もっと慎重であるべきでしょう。
ではなぜ、日本はこれほどまで不用意に農薬を空中散布するのか。小澤所長によると、無人ヘリコプターによる農薬空中散布をめぐる官民一体の事業である、農水省の航空防除推進事業が推進されていて、、農林水産航空協会、農薬工業会、日本産業無人航空機協会、ヤマハ発動機・ヤンマー(ラジコンヘリ製造メーカー)などが関わっています。農林水産航空協会の役員名簿を見ると、農水省の役人の天下り先であることが分かるんだそうです。それで、群馬県有機リン空中散布中止に対して、農水省自治体担当者に群馬県に追随しないようにと言ったり、農薬工業会が抗議文書を送ってくるなどしているそうです。
ガソリン税がきっかけになって、税金がいかに天下り官僚の私財に投じられてきたかが一部明らかになってきましたが、それは決して、国土交通省だけではないようです。
官僚は本来、この国の将来を守っていく責任ある仕事を任されているはずなのに、この国の子供達の未来を奪うようなことがなぜできてしまうのか、全く理解に苦しむところです。
(ピコ通信115号、いつものように私の部屋の扉に貼っておきます)