農薬染めの蚊帳

化学物質問題市民研究会のニュースレター「ピコ通信」118号に気になる記事がありました。「日本政府のアフリカ支援の目玉農薬入り蚊帳」です。それによりますと、2007 年6 月に化学物質問題市民研究会が主催した「脳の発達と化学物質――子どもの脳があぶない」というテーマのセミナーで、都立神経科学研究所の黒田洋一郎先生が、具体的な文献とデータを提示して、遺伝子発現の抑制という形で子どもの脳の発達を阻害するとされた「ペルメトリン」を塗った蚊帳が、日本政府のマラリヤ対策援助ODAの対象となっているというのです。
そこで筆者は、ある会合に出席していた外務省国際協力局 民間援助連携室の首席事務官に直接、黒田先生の文献を記した印刷物を手渡して、「後になって、日本の援助が国際的な非難の対象にならないためにも、この文献をよく読んで、農薬の入らない蚊帳の普及にアフリカでのマラリヤ対策支援を転換してほしい」と話したところ、「よくわかりました。文献を調査して、検討してみます」というお返事であったそうです。
この記事では、農薬染めの蚊帳の危険性として、「その蚊帳をアフリカの乳幼児が誤って手で触れたり、最悪舐めない保証がどこにあるのか。触ればすぐに洗えばいいとしているが、アフリカにそのような水があるのか」と訴えています。

私が文科III類から環境問題解決に貢献するために理学部に進学したのは、上っ面だけ見ていると(もしくは人間の都合でできた言葉だけで語ると)、見えてこない現象が、現実として
私たち人間に、それがゴキブリであるか人間であるかの区別もなく降りかかってくることを、幼いときに体験しているからです。

このお話も、真に自然科学のデータを積み上げて、だからヒトにもこうなるからこうしよう、という方向で議論していただきたいと思います。

ピコ通信最新号、いつものように私の部屋の扉に貼っておきます。

PS:ところで私の学生さんの中に、蚊帳の中で寝た記憶がある方はいるのでしょうか。川の水が台所を通り、洗った水から出た有機物を鯉が食べていた祖母の家。たきつけで五右衛門風呂を沸かすのが下手で「なんて不器用な子」だと笑われた昭和40年代の長良川流域。井上陽水の歌に、蚊帳の中に蛍を放つという歌詞がありますけど、あの歌の意味はあと数年で陽水を聞くような世代からは意味不明な曲になるのかなと、16歳の息子の部屋から聞こえてくる曲を聴きながら思います。

(2008年8月27日追記)
本日、下記のコメントを個人メールで受け取りましたので追記します。

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農薬染めの蚊帳という記述について気になった点がありましたのでコメントさせて頂きます。

http://anond.hatelabo.jp/20080702214414

殺虫剤入りの蚊帳でないただの蚊帳では全く効果がないというレポートもあり、農薬と仰々しく言う程発がん性について高くないという考察もあります。

一方的な視点でのみ発言されていると、マラリア罹患率を下げるという重要な論点から外れてしまう気がします。

一方的な味方によるデマを流布させないためにも、記述を変更されてはいかがでしょうか?