福岡飲酒3児死亡事件控訴審初公判

8月29日記事で、福岡市博多区海の中道大橋で市職員の運転する飲酒運転の車が一家5人の乗った車に追突し、大上紘彬(ひろあき)ちゃん(当時4歳)、倫彬(ともあき)ちゃん3)、紗彬(さあや)ちゃん(1)が亡くなるという事件の刑事裁判控訴審が3日に始まることをご紹介しました。その控訴審の内容です。

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3日、福岡高等裁判所で二年前に起きた3児死亡飲酒ひき逃げ事件の控訴審初公判が開かれました。

検察側の控訴趣意書の説明は割愛しますが、弁護人側は、「正常な運転が困難であった状態に陥っていたのは、被告のほうではなく、居眠り運転をし、急ブレーキをかけたと推察される
大上哲央氏のほうであった。」と主張していました。

その根拠に、
−追突痕から見られるノーズダイブの高さが一般的には5cm程度のところ、15cmもある。追突した被告車両だけでは説明できない。
−大上哲央氏が時速30キロという異常な低速で走行していたと推察させる複数の証言があること。
−哲央氏はふだんから通りなれている道を走行しており、橋の下には海があるということを解っていながら、衝突されてから車が転落するまでの数秒間、ブレーキを踏んだり、ハンドルを回したりの一切の転落回避措置を取っていないこと。
−後ろから急接近してくる車をミラーで確認しているのにも関わらず、助手席に居たかおり氏よりケガの程度が重いのは、哲央氏が意識的にハンドルを握っていなかったからと推量されること、を挙げていました。

弁護人は、控訴趣意の説明の冒頭、裁判官に向かってではなく、傍聴席のほうを向いて、「裁判は事実認定をめぐる検証に基いて行われるべきである。いたずらに国民の処罰感情に配慮して適用法令を変えるというような、人民裁判の愚を犯すようなことを検察はするべきではない」と述べていました。
本件の事実関係に詳しくない一般の法律家が聞いたら、弁護人はすごくまっとうなことを言っている、と聞こえたことであろうと思い、巧妙な戦略を展開していく弁護人に対して、やや抽象的とも聞こえた検察側の説明に歯がゆさを感じました。

「加害者の人権を守る」という正義を掲げていれば、弁護人は何を言っても、やっても許される、とは思えません。
これ以上、被害者遺族を傷つけるようなことが、裁判で起きないことを願っています。

なお今後は、11月12日、12月24日に公判が開かれる予定です。
哲央氏を第一審に続いてもう一度証人として証言させたい、という検察・弁護側双方の主張に対して、裁判所はその必要性は認めたものの、(証人尋問の)手法について今後検討するようです。

(かな・ちかメールNo.163より抜粋)