ASLO Aquatic Sciences Meeting 2009 (1)

大会初日に当たる26日(月)は、昼休みを含み10時半から18時までと1日を使った下記セッションを聞いていました。前回のカナダSt.Jonesでの大会は水草関係でここまでまとまったセッションはなかったことから、やはりヨーロッパで水草と水質との関係について関心が高いのではないかと思いました。
なお発表者のスペルが変になっているところ(Inken Kruse, i.とか)は、印刷されているプログラムでもそうなっているのでご了承ください。

010 Macrophyte-Centered Biotic Interactions in Aquatic Habitats

Vanderstukken, M.; Declerck, S.; Muylaert, K.: COMPARISON OF THE EFFECTS OF SUBMERGED MACROPHYTES AND DAPHNIA IN THE CONTROL OF PHYTOPLANKTON BIOMASS: A MESOCOSM STUDY
水草が生えている湖沼にはダフニアが生息しており、透明度が高くなるのは水草の存在そのものなのかダフニアによる植物プランクトン捕食効果なのか区別できない。そこで下記のように実験区を作った。
 ダフニアの条件:なし・小さいのがいる・大きいのがいる
 水草(Elodea)の条件:なし・あり
これらの条件で6通りの組み合わせができ、各組み合わせについて6つのメソコスムを作って実験した。
結果、ダフニアの有無やサイズに関係なく、水草の有無によって透明度が高くなった。
次に、水草によって透明度が高くなるのは水草によるアレロパシー効果であることを検証するために、植物プランクトンをダイアリシスバッグにいれて水草が生えている水と生えていない水とでバッグ内の植物プランクトン濃度の変化を調べた。その結果、水草によるアレロパシー効果で植物プランクトンが現象することが分かった。

Triest, L.; Peretyatko, A.; Teissier, S.; De Backer, S.; Van Onsem, S.: WHOLE-SYSTEM EXPERIMENTAL STUDIES ON RESTORATION POTENTIAL OF BIOMANIPULATION FOR HYPEREUTROPHIC PONDS: ROLE OF SUBMERGED MACROPHYTES AND ZOOPLANKTON SIZE
土壌シードバンクではシャジクモ類の方が多く芽を出すのに、現場でバイオマニピュレーションを行った結果では1年後にはPotamogetonが優占していた。現場では水鳥がシャジクモ類の芽生えを食べているらしい。

Le Bagousse-Pinguet, Y.; Straile, D.: CASCADING TROPHIC INTERACTIONS IN MACROPHYTE BEDS: THE ROLE OF DIRECT AND TRAIT MEDIATED EFFECTS.
草食魚による水草の捕食は、一過的に地上部のバイオマスを減らすが、翌年には復活する。しかしそれが繰り返されると、地下茎に蓄える養分が減り、やがてバイオマスの減少をもたらす。

Vinther, H. F.; Lauridsen, T. L.; Andersen, F. Ø.: DOES ALUMINUM RESTORATION OF LAKES AFFECT MACROPHYTE GROWTH? GROWTH OF LITTORELLA UNIFLORA AND POTAMOGETON CRISPUS UNDER ALUMINUM EXPOSURE.
アルミニウムを添加した土をポットにいれ、それに水草を植え付けて対象池で栽培した。その結果、Potamogeton crispus では差が認められなかったが、Littorella unifloraはアルミニウムの添加により成長が阻害された。またどちらの種も根にアルミニウムを蓄積していた。草体中のリン濃度は、アルミニウムを添加した個体の方が低かった。
植物プランクトンの抑制目的に行うアルミニウムの散布は、従って水草に負の影響を与える可能性も考慮して行うべきである。

Berge, D.; Johansen, S. W.; Mjelde, M.; Larsen, B. H.; Lombardo, P.; Källqvist, T.: INVASION OF ELODEA CANADENSIS IN LAKE STEINSFJORD (S-E NORWAY) AND LONG TERM IMPLICATIONS FOR BIODIVERSITY, WATERFOWL AND LAKE PRODUCTIVITY
オオカナダモの侵入以来30年間のモニタリングによれば、オオカナダモは堆積物からリンを吸収していたと考えられるが、堆積物中のリンが少しづつ不足状態に移行していて、地下茎の栄養濃度がそれにつれて減少していた。1998年以降、白鳥などの水鳥がオオカナダモの葉を食べ始めた。水鳥の糞は3日で分解して栄養塩になるので、堆積物中のリンがオオカナダモと水鳥の摂食を介して植物プランクトンに利用されやすい状態になっている。

Hilt, S.; Henschke, I.; Rücker, J.; Nixdorf, B.: CAN SUBMERGED MACROPHYTES INFLUENCE TURBIDITY AND TROPHIC STATE IN DEEP LAKES?
Genkai-Kato and Carpenter (2005)は、深い湖は水草の有無によって透明度は変化しない。
本研究で対象としたScharmutzelseeは、1998年以降リン濃度が減少し、2003年からは植物プランクトンの減少と透明度の上昇が続いている。2003年以前の調査と2006年の調査とを比較すると、2006年の調査では推進4mまでシャジクモ類が生えており(湖全体の18〜24%)、これは2003年以前の調査では確認されていなかったことから、シャジクモ類の繁茂が透明度の上昇に寄与していると考えられらた。
(この内容は印刷になっているか尋ねたら、水草の調査時期が2003年からずれていたために、リジェクトになったとのこと。シャジクモ類復活により深い湖沼の透明度も増加したという、一番言いたいことを少し抑えて、再投稿してみるとのことだった。キーワードは湖沼名やシャジクモにならない可能性が高いので、筆頭著者の名前Sabine Hilt(このセッションのチェア)で検索すること)

Cattaneo, A.; Hudon, C.: INTERACTIONS BETWEEN SUBMERGED MACROPHYTES AND BENTHIC CYANOBACTERIA ALONG A GRADIENT OF WATER QUALITY DEGRADATION IN THE ST. LAWRENCE RIVER (QUEBEC, CANADA)
Lyngbiaが増えたときは水草が減っている。

Köhler, J.; Kleka, J.; Hilt, S.: FEEDBACK EFFECTS OF AQUATIC VEGETATION ON TURBIDITY IN A LOWLAND RIVER
川は流れが一定なので、水草帯復活の影響を下流側が直接反映している。
水草帯の復活により、SSは明らかに減少した。また流れが緩やかになって水位が上昇した。水草帯の復活は、木陰になる部分では起こりにくかった。

Kruschel, C.; Schultz, S. T.; Bakran-Petricioli, T.: LOW FAUNAL ABUNDANCE AND DIVERSITY IN MEDITERRANEAN SEAGRASS IS LINKED TO THE SEGREGATION OF SEAGRASS RESIDENT PREDATORS AND THEIR POTENTIAL PREY
アマモ場は幼魚が育つ場所との評価が一般的である。しかしアマモ場には捕食魚も多く生息し、アマモ場における魚の生物量が、周辺の他の海岸環境(砂地、岩礁)と比べて多いとは言えない。

Hidding, B.; Nolet, B. A.; de Boer, T.; de Vries, P. P.; Klaassen, M.: CONTRASTING EFFECTS OF ABOVE AND BELOWGROUND HERBIVORY ON AQUATIC MACROPHYTES
水鳥が夏に葉を食べるのか、冬に根を食べるのかで、水草バイオマスに与える影響は全く異なってくる

Inken Kruse, i.; Anneli Ehlers , a.; Esther Rickert, e.; Markus Molis, m.; Uwe John, u.; Florian Weinberger, f.: CELL WALL DEGRADATION PRODUCTS INDUCE ANTI-HERBIVORE RESISTANCE IN MARINE ALGAE
海藻をいれた容器にその海藻を食べる等脚類をいれて、4,6,8日間海藻を食べさせた。食べ残しの海藻をフリーズドライにしてペレット状にし、これをその等脚類に食べさせたところ、8日目の食べ残しの摂食量が最も小さく、以下6,4日目と続いた。
等脚類の摂食を受けた海藻はoligoalginateを産出していた。この物質が等脚類の忌避物質になっている可能性がある。

Bakker, E. S.: HERBIVORE IMPACT ON FRESHWATER MACROPHYTES: PLANT STOICHIOMETRY AND PALATABILITY ALONG AN ENVIRONMENTAL GRADIENT
Lodge et al. 1991によれば、水草の捕食者として鳥・ザリガニ・ほ乳類・魚・snailが存在するが、これらにより水草の生物量が変化することはなく、リン律速によってのみ水草の量が減少するとしている(本当?)。そこで植物プランクトン水草、陸上植物のC:N比を比較し、それらの値と捕食のしやすさの観点から、水草が他の分類群に比べて捕食対象として好適かどうか調べた。結果、水草は陸上植物と比べると捕食者にとって、より好適な餌であることが分かった。

Gross, E. M.: INTER- AND INTRAANNUAL VARIATION IN POLYPHENOLIC ALLELOCHEMICALS IN THE SUBMERGED MACROPHYTE MYRIOPHYLLUM SPICATUM L.
Lake Constanceの現場から採取したMyriophylum spicatumの窒素・リン含有率は水位変化によってが変化し、それに応じてポリフェノール類含有率も変化していた。

Thiebaut, G.; Gross, Y.; Morhain, E.: ACCUMULATION OF METALS IN THE AQUATIC MACROPHYTES ELODEA CANADENSIS AND ELODEA NUTTALLII. IMPLICATION ON PLANT-MACROINVERTEBRATES INTERACTIONS
フランスの複数の湖沼において、オオカナダモ草体・水・堆積物のCd, Cu, Cr, Fe, Mn, Ni, Pb, Zn濃度を分析した。土壌や水が汚染されている湖沼においても、これらの重金属が成長を阻害するほどオオカナダモには蓄積していなかった。またオオカナダモを捕食したGammarus中の濃度は、オオカナダモ中の濃度の大小に影響しなかった。