水たまりの生態系

冬学期は本郷で学部生を対象に水環境に関する講義を担当しています。
初回は昨年同様、この講義を通じてどんなことを理解できるようになりたいと期待しているか尋ねてみました。
山登りするので、沢の水の安全性が分かるとよいとか、浄水器で除去しているものって何なのか知りたいとか、水についていろいろ疑問があるんだなぁと、今年もまた思いました。
ある学生が、水はどれくらいあったら生態系ができるのか知りたいと言うので、「その心は?」と問い返したら、「雨上がりの水たまりにアメンボがいて、そんなに早く出てくるものなのかと」
確かに。私もそんな光景を見て、え〜?もう出てくるの?と一瞬思って、そのままだったりしました。そこで今回、ネットで「アメンボ 水たまり」で検索したところ、同じ事に「え〜?」と思っている人は結構いるんですね。即、下記がヒットしました。
アメンボって飛ぶの
このサイトによると、答えは「YES」。
アメンボのほとんどの種類は、4枚の翅(はね)があって、空を飛ぶことができるんだそうです。でも普段は、飛んでいると鳥に食べられるから飛ばない。現在いるところがよほど環境が悪くなったり、つがいを形成するときなど、飛ぶ必要がでてきたときだけに飛ぶようにしているそうです。
というわけで、アメンボが水たまりにいるのは、特にそこがアメンボにとって「恒常的」に住みやすい生態系ができているからではないようです。
そもそも、どんな生態系も自生・他生の原因で物理化学的環境が程度の差はあれ変化していて、それに対応して変遷する一瞬のスナップショットを我々は見ていると思います。その意味で、できたての水たまりには、きっといろんな生物の胞子なり細菌、ウイルスなどがいて、まるで噴火直後の火山のような状態なんだと思います。その火山に地衣類が生え、草が生え、と目に見えるようになる以前もそこには生態系が成立しているように、水たまりも、それが存在している限り、それなりの生態系がどんな瞬間にもあるというのが、私なりの回答です。