参考書14「湖沼学(増補版)」

2007年6月27日付記事で、本書を下記のようにご紹介しました。
−−−−−−−−−
図書館などで借りて、是非勉強してください。生産技術センターから1979年に発行された増補版が、1942年の原本発行後に吉村先生ご自身が加えられたメモもあって、とても参考になります。
−−−−−−−−−
当時はアマゾンなどで入手不可だったので参考書にせずに紹介したのですが、最近、「湖沼学 増補版」で検索したら、某古書店のサイトで定価(5500円)で買えることが分かりました。とても希少な本なので、この価格は良心的だと思います。
陸水研の一部メンバーに情報を流したところ、誰かが注文したのでしょう、今日は在庫リストにありませんでした。時々上記のキーワードで検索してゲットしてください。

3年前に書いたこと以外にこの本をお勧めする理由として、パッと思いつくのは下記です。
・戦前の水質分析法や表記法を調べられる。
・索引を使って辞書代わりに使える(とても充実している)。
・余白の書き込みを見ていると、偉大な先達がどのように研究や思考を深めたか見える。
・当たり前の分析をいかに工夫して改良したかが「付録」を見るとたどれる。たとえば質量分析計にしても買ったままにしていないのは、学部生の頃にこの本を熟読した影響が大きいです。
陸水学を本当に理解するには、最低限どの程度の分野を知っていなければならないか分かる。
・地理的な取り組みの長所・短所を把握できる。

陸水研で博士まで進学するのでしたら、必読書です。東大地理の陸水学を引き継いでいるこの研究室を出て研究者として残っていけるかどうかは、地理学的な考え方で総合的に物事を把握できるという長所をいかすことと、個別の専門の知識・理解力の不足をどう補うか常に工夫することが必要不可欠だからです。

ちなみに吉村先生がこの本を出版したのが1937年で30歳の時、学位論文である「Dissolved oxygen of the lake waters of Japan」がでたのが1938年、31歳です。今の学生さんはこの「Dissolved oxygen of the lake waters of Japan」に匹敵する研究を目指すだけでも大変とは思いますが、吉村先生にあっては学位の研究を進めつつ「湖沼」をここまで考えておられたということは、知っておいてよいかと思います。